研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
21H05611
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
定方 哲史 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90391961)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ミクログリア / 抗体 / IgG / 母乳 |
研究開始時の研究の概要 |
授乳時において、母親の抗体は胎盤や母乳を介して子の血液中に移送され、新生児の免疫力を高める働きをしていると考えられている。 我々が母親の抗体が子に運ばれない遺伝子改変マウスを作製したところ、大脳の抑制性シナプスの減少、ニューロンの形態変化、大脳全体の細胞密度の増加などが見られた。詳細な解剖学的解析を行う他、RNAシークエンスや行動解析を行い、母親の抗体からシグナルを受けたミクログリア細胞の脳発達への影響を明らかにしたい。 我々は本研究により母親の抗体に反応した未成熟ミクログリア細胞の変化とその働きを明らかにする。
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研究実績の概要 |
我々は、ミクログリア初代培養に対するIgG刺激の有無によりどのような遺伝子発現変化が起こるのかについて(バルクの)RNAシークエンスによって解析を行った。その結果、Type Iインターフェロンの発現を促進する遺伝子群の上昇が明らかになった。Type IインターフェロンはJak/Statのシグナル系と密接に結びついている。検討の結果、IgG刺激によりStatのリン酸化が誘起されることを明らかにした。またStatのリン酸化はIgG2aのFc領域のみで誘起されることもわかってきている。このIgG2a刺激はミクログリア細胞の貪食活性も上昇させることも示された。 ミクログリアはマクロファージ様の性質を持つため、Flow Cytometryによる定量的な解析に適している。野生型とFcRn KOマウスから生まれた仔マウスのミクログリア細胞を用い、ミクログリア自身の様々な活性状態のほか、脳の各種細胞の状態(生存・増殖・細胞死・活性状態)について、各種マーカータンパク質を指標として、Flow Cytometryにより定量的に解析を行った。その結果、FcRn KOマウスにおいて、細胞分裂を行っている細胞が少なく、アポトーシスを起こしている細胞が増えていることなどが分かってきた。 現時点においてはFcRn KOマウスにおいて興奮性シナプスの増加が見られている。IgGが結合をしないことでミクログリアの貪食活性が低下するため、シナプスの貪食が起きづらくなっているものと考えられる。 野生型群とFcRn KO群を行動学的に比較し、社会性行動の変化やホームケージでの行動量の変化が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究にはシングルセルRNAシークエンス(scRNA-Seq)による大規模遺伝子発現解析が不可欠であるが、研究室のある棟の改修があり、7月に引越し予定であったが、直前に避難先の部屋面積が足りないことがわかり、避難先が決定せず、scRNA-Seqのサンプル調整の検討に必須であるフローサイトメトリーを予定通りの時期に開始することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
大脳における各種ニューロンおよびグリア細胞を(ミエリンを除いた形で)バランスよく単離する条件をフローサイトメトリーにより検討する。条件決定後、シングルセルRNAシークエンスを行い、野生型とFcRn KOマウスの大脳の各種細胞において、どのような変化が起きているのかについて俯瞰的に捉え、システムとしての変化を包括的に捉える計画である。この解析により、IgG刺激を受けたミクログリアがニューロンやオリゴデンドロサイトに与える影響が細胞のクラスターレベルで明らかになる。
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