研究領域 | 「当事者化」人間行動科学:相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 |
研究課題/領域番号 |
22H05226
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高橋 康介 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (80606682)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 脳内盤 / イメージ / 熟達 / 個人差 / 将棋 |
研究開始時の研究の概要 |
棋士は脳内に将棋盤をイメージし操作する(以降「脳内盤」と呼ぶ)。熟達した棋士の脳内盤の在り方は多様であり、将棋に関する法則と物語が内在化されている。本研究では棋士の中にある熟達した脳内盤の表象と多様性を明らかにし、その多様性を生み出す背景要因を探る。まず脳内盤メトリクスを作成し、オンライン調査により棋士の脳内盤の表象と多様性を定量的かつ体系的に解明する(研究1)。続いて棋士のイメージ化に関連する認知特性の個人差を認知心理学実験により検討する(研究2)。さらにインタビュー調査により棋士それぞれの固有の脳内盤が育まれた熟達化過程、来歴、経験を探る(研究3)。
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研究実績の概要 |
棋士は脳内に将棋盤をイメージし操作する(以降「脳内盤」)。将棋という明確な法則に従う一様の世界に対して、熟達した棋士の脳内盤の在り方は多様であり、脳内盤には棋士が熟達過程で相互作用してきた将棋という世界の法則と物語が内在化されている。本研究ではこのような特徴を持つ将棋と脳内盤に着目し、棋士の中にある熟達した脳内盤の表象と多様性を明らかにし、その多様性を生み出す背景要因を探る。 研究は3つのフェイズからなる。研究1では脳内盤メトリクスを作成し、オンライン調査により棋士の脳内盤の表象と多様性を定量的かつ体系的に解明する。研究2では棋士のイメージ化に関連する認知特性の個人差を認知心理学実験により検討する。研究3ではインタビュー調査により棋士それぞれの固有の脳内盤が育まれた熟達化過程、来歴、経験を探る。 2022年度は採択後速やかに、研究1の準備を開始し、プロ棋士3名を対象に脳内盤の見え方や使い方に関するインタビューを実施した。このインタビューの中から、脳内のイメージにおける時制という視点(過去、現在、未来)と信号の由来(内的、外的)の2次元で脳内盤のイメージを理解することが妥当であるという着想を得た。この成果をもとに、アマチュア高段の将棋プレイヤーを対象にオンライン調査を実施し、時制と信号由来の多様性や性質についての興味深い知見を得ることができた。これまでの研究の成果は学術変革領域会議で報告するとともに2023年度学会発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた脳内盤メトリクスについては、プロ棋士を対象としたインタビュー調査の結果から、外観(アピアランス)の多様性に着目するよりも、そのようなアピアランスの多様性を生み出す心的次元に着目するべきであるという洞察を得た。この成果は計画時にはなかったものであり、本研究をすすめることで、脳内盤の多様性研究を表面的な個人差研究に終わらせるのでなく、脳内イメージの多様性を生み出す心的メカニズムの考察を可能とするような内容へとアップデートできた。この点で、認知心理学・認知科学の観点からも脳内イメージに関する貴重な知見を得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた成果をもとに、脳内盤の時制と信号の由来という2つの次元に着目して、プロ棋士を対象とした脳内盤の調査を実施する。並行して、プロ棋士の脳内盤の構築と利用を支えるような認知メカニズムを探るため、イメージ化に関連する認知実験を実施する予定である。後半には少数のプロ棋士の来歴や経験をヒアリングすることで、イメージ化の形成に関わる発達要因を探る。
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