研究領域 | グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立 |
研究課題/領域番号 |
16H06546
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
酒井 啓子 千葉大学, 法政経学部, 教授 (40401442)
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研究分担者 |
高垣 美智子 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (00206715)
松永 泰行 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20328678)
石戸 光 千葉大学, 法政経学部, 教授 (40400808)
五十嵐 誠一 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (60350451)
鈴木 絢女 同志社大学, 法学部, 准教授 (60610227)
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
山尾 大 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80598706)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 国際関係 / グローバル・イシュー / 地域研究 / 紛争 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
総括班は領域での研究活動の基盤を確立するため、8月に広報委員会を中心にウェブを立ち上げ、公募研究を募集、各計画研究が開催する研究会、ワークショップなどさまざまなイベントを掲載した。また基盤確立のため、「グローバル関係学」活動拠点として、千葉大学に「グローバル関係融合研究センター」を立ち上げる準備を行った。 本領域では2年目以降毎年、海外の主要な大学、研究機関と共同で国際会議を開催するため、総括班・国際活動支援班は、2017年度の国際会議のテーマに「移民・難民・多文化共生」を選び、共同開催相手にはシンガポール国立大学中東研究所を選んだ。2月に同研究所のHo Engseng所長ら主要研究員を招聘し、プログラムや招聘研究者、会議開催時期(2018年1月5-6日予定)について協議した。 総括班・国際活動支援班の役割には、紛争など現代のグローバルな危機にさらされる現地の研究者と密接な関係を構築することがあるが、2月にはイラクのバグダード大学学長を招聘し、日本で初めての大学間交流協定が同大学と千葉大学との間で締結された。バグダード大学一行が薗浦外務副大臣に会見するなど、このことは外交面でも高く評価された。 定例活動としては、「グローバル関係学」に関わる個別の調査研究を統括、理論化し、いかなる研究手法を開発するか模索するため、総括班会議を3回(9月、11月、2月)、全体会議を1回(11月)開催し、分担者たちの研究内容を相互に把握、思考の共有の機会を持った。編集委員会は、ウェブ上でのワーキングペーパーシリーズなどの構築の検討を開始した。また若手育成委員会は、本領域に参加する特任研究員や研究協力者の研究を促進、育成するため、3月に、特任研究員研究報告会を開催した。 これまで「グローバル関係学」と密接な関係をもつ研究を行ってきたベテラン研究者の協力を得るため、5名の総括班評価者を選任した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
総括班の活動としては、ウェブの構築、領域全体の研究活動拠点の確立(千葉大学「グローバル関係融合研究センター」)を実現し、初年度の研究基盤の確立は十分達成できたと考える。特にグローバル関係融合研究センターは、領域内の研究者の共同研究を支えると同時に、千葉大学における関連研究を結び付け、新領域研究の裾野を広げ、本領域研究を科研費採択期間中の時限的なものでなく恒常的・発展的に進めることができる仕組みを設定することに成功した。拠点としての整備を進めるため、ウェブ会議開催用のコンファレンスカメラやコピー・スキャナ大型複合機の購入、PC環境の整備を行い、研究業務を補佐する特任研究員を雇用して、領域全体の活動の運営体制を整備した。 本新領域研究の必要性については、11月東京大学で開催された国際シンポジウム(総括班共催)で領域代表が英語で基調講演"Overcoming the Dilemmas; Relationship as a New Perspective"を行い、認知度の向上に努めた。このような大会発信活動については、計画ではオンラインでの研究論文報告をシリーズ化(ワーキングペーパーあるいは電子ジャーナル)することとしている。編集委員会でオンラインペーパーの掲載準備を進めているが、論文発表の前段階で分担者間の「グローバル関係学」に関する議論をより深める必要がある、との意見が強かったため、2016年度はオンラインジャーナルの開設準備は見送り、領域を横断する仕組みと領域内研究者間の意見交換に力点を置くこととした。全体会議の開催は一回のみであったが、分担者間で研究成果報告や「グローバル関係学」理論構築に寄与する各種情報の交換は、メーリングリストを活用して頻繁に実施した。 また、シンガポール大中東研究所との合同シンポジウムの実施に向けて、経費や招聘相手の選定などについて協議を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
採択時のコメントにもあったように、「グローバル関係学」をいかに理論化し、分析枠組みを確立できるかが、本領域の最大の課題である。その点は、2016年度の総括班会議、全体会議で主要な議題として多くの時間をかけて論じられた。その結果、計画研究独自の共同研究を進めることで、研究者の個別のempiricalな研究を行うとともに、個別の研究から導き出されるconceptualな成果を領域全体で共有し、「関係学」の理論化に貢献する仕組みを作ることが必要であることがわかった。そのため、①手法を統一して、グローバルな危機の状況を把握する「新しい視角」を開発するプロジェクト、②ひとつのグローバルな危機の現象を研究対象として、さまざまな手法、理論、現象の側面を分析し、ミクロからマクロまでの関係性についての分析を総合化するプロジェクトを計画研究横断的に設置することとした。①としては世論調査プロジェクトがすでにスタートしており、また②は「移民・難民・多文化共生プロジェクト」が2017年度早々に立ち上げることが決まっている。これら横断的プロジェクトには、公募研究代表にも可能な限り参画してもらう。 また「グローバル関係学」理論構築のために領域外の研究者に向けて知見と助言を仰ぐこととし、2017年度中に理論的枠組みをめぐるワークショップを国内で開催する。そこでまとめられた「グローバル関係学」試案を、オンラインワーキングペーパーの第一号とすべく、対外発信の準備を進める。海外からも同様の知的貢献を仰ぐため、①2018年度の共同国際会議の開催相手として英SOASを想定して交渉を進めている。また②2018年9月に九州で開催される世界社会科学フォーラムにパネル企画を提案し、採択されたため、そこで「グローバル関係学」の視座を国際的に認知されるように練り上げていく。
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