計画研究
本計画班では、生物生産のホットスポットである北西部北太平洋において生物生産量や低次生物群集の時系列変化の把握と物理化学環境との関係性を季節などの短期から10年規模の長期にわたって明らかにすることが役割となっている。今年度は生物生産の長期的変動とその要因について12から19年にわたって北太平洋亜寒帯域(St.K2, St.SA, St.AB)の西部から中央部およびベーリング海で採取された時系列有機炭素や円石藻および珪藻バイオマーカー、オパールなどの各種フラックスデータとCommunity地球システムモデル(CESM)、全球海洋生態系モデル(COCO4.9-NEMURO)と合わせて解析を行った。St.SAとSt.ABで観測された円石藻と珪藻のバイオマーカーフラックス比(亜熱帯と亜寒帯の群集組成比でどちらの水塊が卓越していたかの指標として用いる)の時系列データは、PDOやENSOの周期などに連動して変化し、PDOが正の位相の時や強いENSOシグナルの1997年や2006年に、相対的に円石藻/珪藻バイオマーカー比が増加し、亜寒帯群集に比べて亜熱帯群集が増加することがわかった。CESMモデルの解析によると、PDOは中央部北太平洋で栄養塩や植物プランクトンに経年変動をもたらし、PDOが正の位相の時に、増加した栄養塩が亜寒帯ジャイアに沿って東へ1ー2年かけて伝搬することがわかった。さらに全球海洋生態系モデルの解析によると、PDOのような長周期の気候イベントによる基礎生産の応答は海域によって影響の出方は異なるが、北西部St.K2周辺では、PDOが水温や植物・動物プランクトンの現存量に影響を及ぼしている結果が得られた。以上のことから、北太平洋ではPDOのような長周期気候変動が水温や栄養塩環境を介し海域によっては1ー2年の時間差をもって基礎生産に強く影響を及ぼしていることがわかった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 4件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 20件、 招待講演 2件)
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