計画研究
霊長類、げっ歯類モデルでの脳深部振動と運動制御に関して、以下の研究を行った。パーキンソン病の病態生理に関して、これまで大脳基底核や視床の神経活動が調べられており、平均発射頻度の変化や発射パターンの変化などが報告されてきた。しかし、大脳基底核をめぐる情報伝達の変化がより重要ではないかと考え、本実験を行った。ドーパミン神経毒であるMPTPをニホンザルに投与し、パーキンソン病モデルサルを作製した。また、あらかじめ、大脳皮質一次運動野、補足運動野の上肢領域に刺激電極を埋めておいた。覚醒下で淡蒼球外節および内節に記録電極を挿入、神経活動を記録し、大脳皮質一次運動野、補足運動野を電気刺激することにより反応を記録した。(1)正常なサルにおいては大脳皮質を電気刺激すると、淡蒼球外節/内節は早い興奮―抑制―遅い興奮からなる3相性の応答が記録できる。パーキンソン病においては、淡蒼球内節では抑制が減少し、淡蒼球外節では遅い興奮が増大していた。(2)L―ドパを全身投与すると、サルのパーキンソン病症状は改善するが、それに伴って、淡蒼球内節では抑制が回復し、淡蒼球外節の遅い興奮が減少した。(3)視床下核にムシモルを注入して神経活動をブロックしても、パーキンソン病症状が改善するが、それと同時に大脳皮質由来の淡蒼球内節での抑制が回復した。大脳皮質由来の淡蒼球内節での抑制は大脳皮質―線条体―淡蒼球内節路(直接路)を介しているが、この抑制が投射先である視床の脱抑制を引き起こし、運動を惹起していると考えられる。パーキンソン病においては、この抑制が減少しているため、運動を引き起こせなくなった、即ち無動に至ったと考えられる。また、L-ドパ療法や視床下核のブロックにおいては、淡蒼球内節の抑制が回復することによって症状が改善すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
霊長類モデル、げっ歯類モデルを使った研究が順調に進んでいる。とくにパーキンソン病の病態メカニズムや治療法について新たな知見を得ることができた。
これまでの成果をとりまとめ、論文化を目指す。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (37件) (うち国際学会 6件、 招待講演 10件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Neurochem Int
巻: 124 ページ: 171-180
10.1016/j.neuint.2019.01.011
Lab Invest
巻: 99 ページ: 210-230
10.1038/s41374-018-0118-4
Neurosci Res
巻: 135 ページ: 37-45
10.1016/j.neures.2018.01.001
Nat Commun
巻: 9 ページ: 1879
10.1038/s41467-018-04286-6
Mov Disord
巻: 34 ページ: 200-209
10.1002/mds.107
Neuron
巻: 99(6) ページ: 1302-1314.e5
10.1016/j.neuron.2018.08.002
Glia
巻: 66 ページ: 2514-2525
10.1002/glia.23502
Sci Adv
巻: 4(12) ページ: eaav0618
10.1126/sciadv.aav0618.
https://www.nips.ac.jp/sysnp/