研究領域 | 染色体オーケストレーションシステム |
研究課題/領域番号 |
15H05976
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白髭 克彦 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (90273854)
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研究分担者 |
永江 玄太 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (10587348)
岡田 由紀 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (60546430)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 染色体 / 希少疾患 / 染色体構造 / 染色体構築 / 転写制御 / 染色体動態 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
コヒーシンローダー、NIPBL遺伝子に変異のあるCdLS患者由来の細胞において、染色体高次構造の解析を行った。相互作用距離の解析から、CdLS細胞では特に100 kb以下の短い相互作用の頻度がゲノムワイドに増加していることがわかった。次に、トポロジカルドメイン(TAD)の解析を行ったところ、TADの構造自体は維持されており、さらに比較的小さなTAD(~500 kb)の構造が強化されていた。また、クロマチンループの解析を行ったところ、CdLS特異的なクロマチンループが新たに形成されていることがわかった。これらのループ長の中央値は150 kbで健常者細胞でみられるループと比べて、比較的短い傾向を示した。また、CRISPR/CASシステムを用いてNIPBLに変異を導入した293FT細胞でも同様の傾向がみられた。これらの結果から、NIPBLはコヒーシンを介した染色体高次構造の制御に機能していることが示唆された。興味深いことに同様の高次構造変化はCdLSと類似の疾患であるCHOPs症候群(AFF4遺伝子の機能亢進が原因)でも引き起こされていた。 これと並行して、in vitroの転写再構成系をもちい、コヒーシンローダーによる転写の制御機構について解析を行っている。この結果からはコヒーシンローダーはRNAポリメラーゼがプロモーターにローディングされ、プロモーター近傍で停止が誘導されるまでの間にローディングされること、コヒーシンローダーの欠損はAff4の過剰なローディングを誘導し、逆にAff4の欠損はコヒーシンローダーの過剰なローディングを誘導することが判明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hi-C技術の導入に遅れを取ったが、コヒーシンの変異が原因で引き起こされる希少疾患について、エンハンサーとプロモーターのミスコネクションによる遺伝子の活性化という予期しなかった新たな知見を得た。また、精子のエピゲノム解析技術を班内共同研究により立脚し、加齢精子について予想外の新たな知見を得た。いずれも論文執筆中あるいは投稿中である。これらの理由により概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、コヒーシン病に類似の新たな希少疾患をいくつか単離しており、その染色体高次構造の解析をすすめる。in vitroでのコヒーシンによる転写活性化のシステムも既に構築できたので、ゲノム情報とin vitro情報を統合し、コヒーシンによる転写制御の分子実態を明らかにする。また、加齢による精子エピゲノムへの影響については引き続き詳細に検討し、加齢精子による次世代への影響について分子レベルで明らかにする。
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