研究領域 | 染色体オーケストレーションシステム |
研究課題/領域番号 |
15H05977
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
広田 亨 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 部長 (50421368)
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研究分担者 |
石井 浩二郎 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授(常勤) (40360276)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 染色体動態 / M期 / 異数性 / 染色体分配 / 染色体分離 / 中期後期移行 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、がんの染色体動態の観察を基盤として、染色体不安定性の獲得過程に関連すると考えられる染色体構造や制御についての体系的な情報を得て、染色体オーケストレーションの観点より細胞病態を理解することを目的としている。本年度は次の成果が得られた。 1)染色体の巨視的微視的構造を解析する手法の開発。染色体あるいはクロマチン線維の巨視的構造を解析するために、CRISPRイメージング法およびFISH法を行い、特定のDNAの染色体における空間的位置情報の取得ができるようにした。これらの画像解析とHiC解析等のゲノム学的手法によって得られた情報とを組み合わせて染色体の巨視的構造と微視的構造情報の連結を進めた。 2)中期後期移行期におけるセキュリンとサイクリンの濃度変化を生化学的に測定し、本領域内の伊藤武彦グループと協力を得て定量結果に基づく数理学的なシミュレーションを実施した。細胞質と染色体画分に分けた従来にないモデルからは、染色体画分ではサイクリンB濃度が予測を超えて高く、染色体分離異常を防ぐサイクリンBによるセパレースの活性化制御機構が示唆された(Konishi et al., 2018)。 3)均一な染色体異数性を誘導的に取得できるアッセイ系の樹立を分裂酵母において進め、がん細胞で見出される変化との共通項の抽出を行った。また、領域内の伊藤武彦グループと共同で分裂酵母におけるHi-C解析手法の確立を進めた。その上で、染色体編成が大規模改変された分裂酵母のHi-C解析を行い、高次レベルの染色体編成変化が染色体の核内3D収納に与える影響を明らかにした。さらに、染色体異数性と細胞小器官の関連を確かめるためにミトコンドリア形態の生細胞顕微鏡観察法を確立し、解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通り:Hi-C法とFISH法とを組み合わせて解析する方法論が完成しつつあり、これを用いた染色体高次構造の解析を進める準備がすすんだ。サイクリンBとセパレース等、M期染色体上で進行する生化学がありその重要性を指し示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
Hi-C解析等のゲノム学的手法によって得られた情報を顕微鏡下に染色体上で検討し、染色体上の空間位置情報を、ゲノム構造情報との突き合せを進める。。新たな染色体不安定性の背景としてM期チェックポイント・セパレース制御システムの関わりを調べる。異数化する染色体サイズと核内3D収納と細胞ストレスに与える影響の検討を進める。
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