計画研究
大脳皮質の神経回路が正常に発達するためには、生後の初期に自発神経活動や感覚入力の影響下にスクラップアンドビルドされることが必要である。本研究課題ではマウス一次体性感覚野(バレル野)をモデルとしてそのメカニズムの解明を目指してきた。前年度までの研究で、バレル野第4層で検出される自発神経活動は、バレル形成前の生後1日目からバレル形成期にあたる生後5日目頃までパッチワーク型の時空間パターンを示す(フェーズ1)が、バレル形成終了後の生後9日目には複数のバレルにまたがる広範な領域での同期活動(フェーズ2)、さらに、11日齢では同じバレルに属する神経細胞であっても個別に活動し、体性感覚野全体でスパースな発火パターンを示す(フェーズ3)ことを見つけた。本年度は生後2週間の体性感覚野第4層の自発活動のフェーズ遷移を引き起こすメカニズムに関し、フェーズ1から2への遷移は自発活動の入力元が視床から視床以外(おそらく大脳皮質)に移ることによること、フェーズ2から3の遷移の間にバレル野第4層の興奮性神経細胞の樹状突起スパイン密度が急激に上昇すること、および、その上昇を抑制すると自発活動の遷移が妨げられることを明らかにした。また、バレル野第4層の興奮性神経細胞には有棘星状細胞と錐体細胞が存在するが、前年度までに視床皮質軸索が大脳皮質に侵入できない変異マウスで有棘星状型細胞の出現が抑制されること、および、その変異マウスで発現レベルが変化する遺伝子を同定していた。本年度は、変異マウスで発現レベルが上昇する遺伝子の一つを第4層細胞に強制発現することにより有棘星状型細胞が減少、錐体型細胞が増加することを示した。有棘星状型細胞は、生後発達初期に視床皮質入力依存的に大規模な樹状突起スクラップアンドビルドを受ける細胞であり、本研究によりその分化メカニズムの一端が明らかとなった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 産業財産権 (1件)
The Journal of Neuroscience
巻: 41 ページ: 6822~6835
10.1523/JNEUROSCI.0226-21.2021
Development, Growth & Differentiation
巻: 63 ページ: 323~339
10.1111/dgd.12739
巻: 41 ページ: 1207~1217
10.1523/JNEUROSCI.0527-20.2020
巻: 62 ページ: 476~486
10.1111/dgd.12693
巻: 40 ページ: 7637~7650
10.1523/JNEUROSCI.1116-20.2020
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 21516
10.1038/s41598-020-78608-4
eBioMedicine
巻: 62 ページ: 103130
10.1016/j.ebiom.2020.103130
Nature
巻: 588 ページ: 296~302
10.1038/s41586-020-2926-0
巻: 10 ページ: 14437
10.1038/s41598-020-71474-0