研究領域 | スロー地震学 |
研究課題/領域番号 |
16H06473
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小原 一成 東京大学, 地震研究所, 教授 (40462501)
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研究分担者 |
浅野 陽一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 主任研究員 (00399362)
田中 佐千子 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 主任研究員 (30551535)
中村 衛 琉球大学, 理学部, 教授 (60295293)
内田 直希 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80374908)
宮澤 理稔 京都大学, 防災研究所, 准教授 (80402931)
山下 裕亮 京都大学, 防災研究所, 助教 (80725052)
篠原 雅尚 東京大学, 地震研究所, 教授 (90242172)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | スロー地震 / 沈み込み帯 / 地震現象 |
研究実績の概要 |
四国西部の深部低周波地震の主要な活動の始まり方に多様性があることを見出した.これは通常の地震の前震活動の有無や房総半島沖SSE等の加速様式の多様性にも対応し,断層すべり発展の複雑性を示す.新規広帯域地震観測点の記録を用い,深部低周波微動活動に伴う超低周波地震の移動や,発震機構・震源決定への有用性を確認した.低周波地震データを基にGNSS時系列を積算し,2004~2009年に起きた12回のETSに伴う累積変位が最大1.5cm程度であることが分かった.日向灘に広帯域型・圧力型を含む長期観測海底地震計を設置し,第2期観測を開始した.過去データの再解析により,浅部低周波微動で解放される地震波エネルギー量の空間分布が地下構造に対応することを明らかにした.南西諸島北部で超低周波地震の高精度位置決定を行い,2019年1月の種子島近海地震後に周辺域に起きた地震・超低周波地震活動を詳細に捉えた.南西諸島南部で超低周波地震の地球・海洋潮汐応答が季節変化を示し,それが大気・海底圧力の影響による可能性があること,八重山諸島周辺で起きた余効すべりやダイク貫入による数年オーダーの長期的歪変化が西表島周辺の地震活動を活発化させたことを明らかにした.ボアホールアレイを用いて極微小シグナルを検出するための確率論的手法の精度確認を行い,2016年4月1日三重県沖の地震の観測記録に適用し,表面波による超低周波地震の誘発の検出に初めて成功した.日本海溝海底地震津波観測網の記録を用い,十勝沖・三陸沖の海溝軸近傍にて低周波微動活動を検出し,超低周波地震活動との対応を見出した.三陸沖の海溝近傍における繰り返し地震からすべりレートを推定し,東北沖地震後に大きな変動を繰り返しながら低下する傾向を見出した.2015年に見られる大きなすべりレートは超低周波地震や海底地殻変動を伴うため,スロースリップの発生を示すと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海域における浅部スロー地震に関しては,他の研究プロジェクトとの連携を実施し,本研究計画により日向灘に構築した海底地震水圧観測網内に,2018年3月から2019年1月まで小スパン海底地震計アレイによる観測を実施した.また,本研究計画の観測域近傍において,同時期に同様な海底観測を実施しており,広域な活動把握が期待される.島嶼部の広帯域地震臨時観測点については,設置が当初の予定通り完了し,データのメンバー間での共有準備も問題なく進んでいる.また,データ解析によって機動観測の有効性も確認されている. 琉球海溝においては,超低周波地震に伴う低周波地震を利用することで,これまで困難であった(超)低周波地震の空間分布を詳細に把握することができ,様々な地震活動およびプレートに関する情報と比較できるようになった.さらに琉球海溝の中での潮汐応答の空間変化と時間変化を検出することができ,超低周波地震の発生位置が特定されることで正確な潮汐応答計算が可能になった.東北日本の太平洋沖に整備された日本海溝海底地震津波観測網の記録を用いて,同地域で低周波微動を初めて検出した.今後,更に検出例が増え海溝軸付近でのスロー地震活動の実態がより明らかになることが期待される.地震波による各種スロー地震の動的誘発の特徴を調べるために,それらの検出手法を確立させ,また実際に検出作業に着手した.四国西部域に設置予定の超稠密短周期地震計アレイ観測装置については,約半年間にわたる連続波形記録を記録するための装置改良を当初の計画以上に進め,広帯域地震計低周波地震の主要な活動の始まり方に多様性があることも見出した.繰り返し地震については,九州・四国沖でのスロー地震の棲み分けを見出し,その移動現象・相互作用の詳細を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
南海トラフ西部から南西諸島における浅部低周波微動・超低周波地震・短期的SSEを把握するため,長期観測型海底地震計と海底圧力計による観測を行う.昨年度に観測機器入替及び第2期観測を開始し翌年夏まで実施予定である.観測期間中に複数回発生したスロー地震活動の詳細を明らかにし,相互関係の解明を目指す.島嶼部に設置した広帯域地震観測点を維持管理するとともに,データや処理結果をメンバー間で共有する.南西諸島全域における地震・超低周波地震活動の時空間的特性,特に地震と超低周波地震が同期して活発に起きる地域と全く活動のない地域の特性を明らかにする.琉球海溝の超低周波地震と低周波地震に注目してその活動特性を解析し,スロー地震間の関係とプレート間摩擦特性を明らかにする.潮汐応答の長期変動をもとに,プレート運動と大気・海洋変動の関係を明らかにする.東北日本太平洋沖で発生する低周波微動や超低周波地震の地球潮汐応答及びその時空間変化を調査する.それらの共通点・相違点を整理し,周辺で発生するSSEの時空間推移との対応関係に注目しつつ,その特性を明らかにする.独立型地震観測システム専用電池ボックスを作成するとともに,現地調査による短周期地震計超稠密アレイ観測点の配置案や観測スペックを検討し,本年度後半以降に四国西部で観測を開始し,低周波微動の連続記録を取得する.四国・紀伊・東海で合計約15点,観測期間約2年の広帯域地震計臨時観測を開始する.超低周波地震のすべり分布の広がりなど震源の詳細情報の推定を行うため,低周波微動やSSEの解析結果との比較を進める.超低周波地震における大地震表面波による動的誘発現象の原因を調べ,超低周波地震の発生メカニズムを調査する.琉球弧での繰り返し地震の同定・カタログ構築を行うとともに,SSE・スロー地震・通常の地震の間の相互作用を調査する.
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