研究領域 | ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~ |
研究課題/領域番号 |
16H06490
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山口 昌弘 東北大学, 理学研究科, 教授 (10222366)
|
研究分担者 |
磯 暁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20242092)
諸井 健夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60322997)
|
研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 素粒子物理学 / 初期宇宙論 / 超対称性 |
研究実績の概要 |
アクシオン的場の振動が現在の宇宙に存在する場合、それが宇宙21cm線のフラックスに与える影響ついて研究した。EDGES実験の宇宙21cm線フラックスの特異的振舞の観測結果を受け、本研究では、その振舞がアクシオン的場が電磁波に転換されることで説明できることを指摘し、シナリオが成り立つパラメータ領域を明らかにした。また、現在の宇宙においてヒッグス場に結合したスカラー場がゆっくりと運動している場合、ヒッグス場の真空期待値は時間変化する。本研究では、その宇宙論的制限を明らかにし、あるクラスの弦理論に基づく素粒子模型を制限することに寄与した。さらに、暗黒物質粒子となり得る電弱相互作用を持つ粒子を、将来の加速器実験で検証する手法について研究し、100TeV程度の重心エネルギーを持った陽子・陽子加速器におけるレプトン対生成過程に対する輻射補正の効果を調べ、暗黒物質粒子のシグナルを検出し得るパラメータ領域を明らかにした。 素粒子の階層性問題を弦理論の観点から理解するために、回転するDブレーンの間の引力の計算を行った。我々は、回転角速度に対する弦理論の摂動計算をすることで、この相互作用を計算し、回転で生ずる引力ポテンシャルを評価することができた。宇宙がこのような回転するDブレーンで構成されていて、電弱対称性がこの効果で破れているとすると、ヒッグスセクターにローレンツ対称性の破れが生じ分散関係が変形を受ける。これから導かれる回転角速度は観測から、0.1GeV以下でないと ならないことがわかった。 宇宙の暗黒エネルギーとして、宇宙初期の真空相転移で生じた泡真空の生成による重力効果のシナリオを考察し、暗黒エネルギーはわずかな時間、空間依存性を持つことを示し、観測による検証について考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの課題について、それぞれ計画していた研究が順調に進み、当初目指していた成果が得られ、数多くの論文発表につながった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究をさらに推進するため、1.電弱新物理の解明に基づくボトムアップ的研究、2.超弦理論に基づくトップダウン的研究、3.新物理に基づく宇宙進化史の研究 について、研究代表者及び分担者がそれぞれ研究遂行の責任者になりつつ、連携研究者らとも協力しながらこれらの研究を有機的に進める。LHC実験において、新物理の兆候が見えない中、他の実験・観測の結果も踏まえながら、新物理についての研究を進め、それがもたらす宇宙進化史や、時空構造への示唆を考察する必要がある。 そのため、他の理論研究班との連携を取りながら、理論関係の研究集会をコロナ感染症の状況を見ながらオンラインもしくは対面で開催する。また、可能になった場合には、海外から研究者を招聘し、共同研究を進めるとともに、国内外の国際会議・研究集会において、成果発表するとともに研究動向について情報収集をはかる。引き続き博士研究員を雇用し、これらの研究の補助にあたらせる。重心系のエネルギー13TeVで得られたLHC実験の結果に基づき、あるべき新物理及び時空像について、さらに研究を進める。
|