計画研究
本研究では、「ネオ・セルフ」に反応する抗原レセプターを、単一リンパ球解析手法を用いて網羅的にクローニングし、レセプターの「ネオ・セルフ」に対する反応性を解析する。そのために、まず、ネオ・セルフ反応性T細胞、B細胞を簡便に検出する方法の確立を目指し、研究を進めた。まず、ネオ・セルフ分子と主要組織適合抗原(MHC)分子との複合体(pMHC)の可溶化分子を作製するために、その作製プロトコールの確立を目指した。モデルペプチドとMHCクラスI分子(pMHCI)の可溶化分子をExpi293F細胞を用いた系で作製したところ、十分な量の可溶化分子が得られた。大腸菌等で作製する場合と異なり、作製した分子の立体構造を再構築する必要がなく、作製したpMHCIを四量体にすることで、その特異的T細胞受容体(TCR)を発現したT細胞に特異的に結合することをフローサイトメトリーを用いて確認できた。さらに、ペプチドとMHCクラスII複合体の可溶化分子も作製し、現在その機能を解析しようとしている。また、ネオ・セルフを認識するレセプターを同定する研究の一環として、組織に浸潤しているT細胞のTCRの解析を行った。一つは、腫瘍浸潤T細胞の解析で、単一細胞レベルでの解析により、腫瘍内でクローナルに増殖しているT細胞集団を同定し、そのTCRが腫瘍に特異的に反応することを確認した。また、徳島大学松本らと共同研究を行い、彼らが作製したAIRE過剰発現トランスジェニックマウスにおいて、組織に浸潤している自己反応性と考えられるT細胞(西嶋、日本免疫学会、2016年)の解析を行った。同様に、単一細胞レベルでTCRを解析し、組織浸潤Tリンパ球中にクローナルに増殖しているポピュレーションを見出し、その発現ベクターを作製した。今後、その機能を解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の目標は、ネオ・セルフ反応性T細胞、B細胞を簡便に検出する方法の確立と、ネオ・セルフ反応性リンパ球の検出法の確立である。これまでに、ネオ・セルフ分子結合MHC分子複合体の可溶化分子を作製するために、MHCクラスI分子とペプチドの複合体の機能的可溶化分子を作製するプロトコールを確立している。また、MHCクラスII分子とペプチドの複合体の可溶化分子も作製できており、現在、その機能を解析しようとしている。また、もう一つの目標である、ネオ・セルフ反応性リンパ球の検出法の確立についても、腫瘍や組織浸潤リンパ球を単一細胞レベルで解析することで、腫瘍や組織におけるネオ・セルフを認識するレセプターの候補を取得できている。以上の結果より、研究はおおむね順調に進展していると考える。
ネオ・セルフ反応性免疫細胞の検出法に関しては、引き続き、可溶化ペプチド/MHCクラスII分子複合体の機能解析を行う。また、松本との共同研究で取得した組織浸潤Tリンパ球のTCRに関しては、その機能の解析を行っていく。また、ネオ・セルフ認識レセプターについても可溶化分子を作製し、ネオ・セルフ/MHC複合体とレセプターとの相互作用の解析を進めていく。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件)
Blood
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1182/blood-2016-11-752378
Gastroenterology
巻: 152 ページ: 1395-1406
10.1053/j.gastro.2017.02.001
Sci Rep
巻: 6 ページ: 31502
10.1038/srep31502
Biochem Biophys Res Commun
巻: 474 ページ: 709-714
10.1016/j.bbrc.2016.05.015