計画研究
T細胞はT細胞受容体(TCR)を用いて、標的細胞表面の主要組織適合抗原(MHC)分子に抗原ペプチドが結合したMHC/ペプチド複合体を認識し活性化される。近年、抗原ペプチドに加えて変性したタンパク質そのものがMHC分子に結合し抗原提示されることが明らかにされた。本新学術領域では、セルフのMHC分子にこのような抗原が結合した複合体を「ネオ・セルフ」として包括的に抗原提示を理解することで、自己免疫疾患の発症機序等を明らかにすることを目的としている。我々は、B細胞、T細胞の単一細胞解析により、B細胞からは抗原特異的抗体、T細胞からは抗原特異的TCRを効率よく取得する方法を開発してきた。本新学術領域ではリンパ球の単一細胞解析により、ネオ・セルフに反応するリンパ球のレパートリー解析およびその抗原受容体を取得し、ネオ・セルフとの反応を解析する。2019年度は、ネオ・セルフを認識する抗体の取得法の開発を行った。すなわち、ウサギに可溶化MHC/ペプチド複合体を免疫し、マイクロウェルアレイチップを用いた単一細胞解析により、MHC/ペプチド複合体を認識する抗体の取得を試みた。通常通り、チップ上で、MHC/ペプチド複合体に結合する抗体を産生している細胞を同定し、その細胞より抗体を取得すると、取得される抗体は、抗原ペプチド非特異的にMHC分子に結合する抗体がほとんどであった。そこで、チップ上でMHC/ペプチド複合体に結合する抗体を産生する細胞を同定する際に、抗原でないペプチドを結合したMHC分子でブロッキングを行ったところ、取得された抗体のほとんどが目的の抗原ペプチドが結合したMHC分子を特異的に認識する抗体であった。現在、本方法を用いて、ネオ・セルフを特異的に認識する抗体の取得を試みている。
2: おおむね順調に進展している
抗原ペプチド/MHC分子複合体を認識する受容体は通常T細胞のTCRである。TCRの抗原ペプチド/MHC分子複合体に対する親和性は通常10^-5M以下であり、非常に弱い。可溶化TCRを作製しても細胞表面上の抗原ペプチド/MHC分子複合体への結合を検出することは困難である。それに対し、今回作製した抗原ペプチド/MHC分子複合体を認識する抗体の親和性は高く、細胞表面上の抗原ペプチド/MHC分子複合体の検出は可溶化TCRに較べ容易と予想される。従って、抗原ペプチド/MHC分子複合体を認識する抗体の作製は、今後のネオ・セルフの解析に有用であると期待され、おおむね順調に進展していると考える。
ネオ・セルフに対するTCRおよび抗体を取得し、ネオ・セルフの構造・発現、TCR等との反応様式等を解析していく。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 4件) 産業財産権 (1件)
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