研究領域 | 新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化 |
研究課題/領域番号 |
16H06557
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
宗景 ゆり 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (30423247)
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研究分担者 |
松田 祐介 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30291975)
古本 強 龍谷大学, 農学部, 教授 (30313208)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 植物生理 / 光合成 |
研究実績の概要 |
1.C4光合成におけるサイクリック電子伝達の機能の解明 C4種フラベリアを用い、二つのサイクリック電子伝達経路のそれぞれ活性を抑制した形質転換体、NdhO-RNAi株、PGR5-RNAi株またはPGRL1-RNAi株の解析を行い、C4光合成ではNDH経路が主な経路として働き、C4光合成に必要なATPを供給するためのプロトン駆動力形成に関与することを明らかにした。また、細胞特異的な遺伝子発現プロモーターを用いて、発現抑制のための遺伝子導入を行った。 2.CP12-3によるC4代謝制御システムの解明 C4種フラベリアに高発現したCP12-3の生理機能を示すため、機能抑制形質転換株を作成した。光合成活性を測定し、低二酸化炭素濃度・高光量の条件において光合成活性が低下することが判明した。これはC4光合成のCO2濃縮能力においてこの因子が機能することを示している。CP12-3はタンパク質と結合する能力を持つと考えられるので、その結合相手を求めることで、代謝上の位置を同定できる可能性がある。 3.無機炭素濃縮機構と連動したプロトン駆動力制御機能の解明 珪藻細胞の無機炭素濃縮機構に関わる2つの重要な因子の機能同定に成功した。細胞膜局在型重炭酸イオン輸送体2種の機能同定を行った。一方、水中光合成の必須因子と考えられるピレノイドを貫通するチラコイド内腔に局在する新規θ型炭酸脱水酵素(Pt-θCA1)を同定した。このタンパク質の過剰発現およびRNAiは、光合成親和性および細胞生育に影響したことから、チラコイドルーメンの無機炭素平衡が珪藻の高親和性光合成に深く関わることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.C4種フラベリアにおいてサイクリック電子伝達活性を抑制した形質転換株の解析を行い、C4光合成における機能の重要性を明らかにすることができた。また、細胞特異的プロモーターを使った、遺伝子導入用コンストラクトの作製および植物の形質転換は予定通りに進んでおり、現在形質転換体を育成中である。 2.CP12-3と結合するタンパク質の検討のために、CP12-3を結合させたカラム担体を用意し、親和性を持つタンパク質の検出を行っている。ホスホリブロキナーゼ(PRK)が再現よく検出されており、有力な結合候補である。C4光合成に関与する酵素のBN-PAGEでの挙動観察から、PRK以外にも候補タンパク質を見いだした。 3.初年度は、珪藻細胞における無機炭素濃縮機構に関わる重要な因子の同定を行うことができた。さらに、海水に特化した高親和性光合成とチラコイド機能との関わりの解明に向け、ピレノイド関連因子の網羅的解析にも着手している。
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今後の研究の推進方策 |
1.C4光合成におけるサイクリック電子伝達の機能の解明 C4光合成におけるサイクリック電子伝達経路の重要性を明らかにするため、作製したC4種フラベリア単独変異株を掛け合わせることにより、二つのサイクリック電子伝達経路の双方の活性を抑制した二重抑制株を作製し解析を行う。現在育成中の細胞特異的プロモーターを使った遺伝子発現抑制株の次世代の種(T1)を採取し、T1ラインを用いて生理学的解析を行う。 2.CP12-3によるC4代謝制御システムの解明 機能抑制株と野生株を用いた比較実験により、さらなる候補を絞る実験系を構築する。PRKとともにCP12-3に結合する候補タンパク質を検討し、in vitroでの複合体再構成実験によって、NADPの必要性などの複合体形成にかかる生化学的要因を検討する。CP12-3の結合相手を同定することで代謝上の機能位置を定め、代謝産物測定などの実験も合わせてこれを介した制御の生理的意義を検討する。 3.無機炭素濃縮機構と連動したプロトン駆動力制御機能の解明 ピレノイド関連因子の同定には、感光標識技術およびLC/MSを駆使することにより網羅的解析を終え、興味深い因子について、変異体を作出後、生理学的解析を行う。また、ピレノイド貫通チラコイドに局在するθ型CAへ無機炭素を供給する因子を同定し、チラコイド機能が無機炭素濃縮にどのように関与しているのかを明らかにしていく。
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