計画研究
前年度までの研究として、2017年度には、主に、昭和基地および周辺のリュツォ・ホルム湾露岩地域での測地学的・地形学的調査を実施した。また2018年度には、ノルウェーのトロール基地およびインドのマイトリ基地での絶対重力測定を実施したほか、2017年度に南極昭和基地や周辺地域で取得したデータの解析や、サンプル・データの処理・解析を進めると同時に、新たなGIAモデル計算を実施することで、既存の南極氷床変動史を用いた地殻変動速度、重力変化のGIA モデル依存性等についての検証研究も行った。今年度は、まず、前年度までに実施した研究によって得られて結果について、国内外の学会等で積極的に発表を行うことで、成果の公表に努めた。また、観測面においては、南極での外国基地における絶対重力測定として、前年に引き続き、韓国のジャンボゴ基地およびイタリアのマリオズッケリ基地での測定を実施した。これらの結果、ジャンボゴ基地では今後の重力変化の研究で基準ともなる絶対重力値を得るとともに、マリオズッケリ基地では、過去の測定値との比較から同地域における重力の変化勾配値を得た。また、インドのマイトリ基地では、先方からの要請もあり、2020年度に予定していた基地周辺での湖底コアサンプリング・地形調査等を、予算の前倒し使用により早期に実施し、良好なサンプル採取に成功した。さらに、東南極沿岸域等における他の研究班と連携した観測研究も実施した。一方、GIAモデリングの研究では、これまでに得られた観測データを生かすため、異なるパラメータでの感度実験を含めた研究を行った。また、衛星データ解析では、SAR衛星データ解析による氷床流動の解析などを実施し、他の研究班とも協力し氷床流動の解析などを進めた。
2: おおむね順調に進展している
2018年度の当初計画としては、1)南極の韓国およびイタリアの基地での絶対重力測定、2)ポスドク1名の追加雇用による、取得済み堆積物等の分析・解析、3)GIAモデルリングや衛星データ解析による氷床流動解析等の継続実施、4)他の研究班との連携による東南極沿岸域等における堆積物調査や南極氷床・南大洋総合発達モデルの検証等を進める予定であった。これらについては、研究実績の概要に記載のとおり、ほぼ、すべて実施することができた。また、これまでの成果についても国内外の学会等で積極的に発表を行うととこに論文化を進めている。さらに、今年度は、2020年度の予算の前倒し使用により、インドのマイトリ基地周辺での調査を先行実施しており、研究は順調に推移していると判断した。
本計画研究では、これまでのところ、当初計画はほぼ予定どおり達成されており、さらに2020年度実施予定であった一部観測については、先行して実施している。これらを受け、2020年度には、外国基地での絶対重力測定としてオーストラリア基地での実施の可能性について打診中であった。しかしながら、COVID-19の世界的な蔓延の影響により、現状では観測実施はほぼ不可能と考えざるを得ない。さらに、国内外での学会等についても開催の中止・延期が広がっており、その参加が十分に見通せない状況にある。従って、今年度の研究推進方針としては、これまでに得られたデータや資料の解析、モデリング研究、衛星データ解析や、それらの成果のとりまとめに主眼をおいて研究を進める予定である。このため、新たにポスドクを1名を雇用し、GIAモデリングに関連する研究等をさらに加速させ、モデル班と連携しながら氷床・固体地球結合モデルの開発を進める。また、取得済みの堆積物等の分析・解析も加速し、古海洋班、氷床班との連携研究を促進する。さらに、衛星データ解析においては、公募研究とも連携しながら、既存の取得データや各種衛星データとの比較・解析をより促進する。一方、南極での重力測定等の本年度実施は困難と思われるが、可能であれば2021年度での実施も視野に入れ、公募研究とも連携しながら、その具体的な方法についての検討も行う予定である。現状を鑑み、これらを効率的に進めるため、テレビ会議システム等を利用しながら、関連研究者との打合せや情報交換を随時積極的に行うとともに、可能な限り学会等での研究成果の公表や得られた結果の論文化に努める。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 16件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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