研究領域 | 熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床 |
研究課題/領域番号 |
17H06321
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
福田 洋一 国立極地研究所, 研究教育系, 特任教授 (30133854)
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研究分担者 |
奥野 淳一 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00376542)
風間 卓仁 京都大学, 理学研究科, 助教 (20700363)
西島 潤 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40315114)
中村 和樹 日本大学, 工学部, 准教授 (60435500)
菅沼 悠介 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70431898)
土井 浩一郎 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (80290873)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | GIA / 氷床変動 / 海面上昇 / 東南極 / 絶対重力測定 / 表面露出年代測定 / 地形観測 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究として、2017年度には、主に、昭和基地および周辺のリュツォ・ホルム湾露岩地域での測地学的・地形学的調査を実施、2018年度には、南極での外国基地における絶対重力測定としてノルウェーのトロール基地およびインドのマイトリ基地での絶対重力測定を、引き続き2019年度には、韓国のジャンボゴ基地およびイタリアのマリオズッケリ基地での測定を実施した。さらに、インドのマイトリ基地では、2020年度に予定していた基地周辺での湖底コアサンプリング・地形調査等を、予算の前倒し使用により早期に実施し、良好なサンプル採取に成功した。 本年度はCOVID-19の影響で、昭和基地周辺をはじめ、予定していた南極での観測は全く実施できなかったため、前年度までに実施した観測で得られたデータの解析や、サンプルの処理・解析を進めることを中心に研究を実施した。 これらの結果、地形学的観測からはリュツォ・ホルム湾沿岸地域での過去の氷床変動史に関する新たな知見を得るとともに、測地学的観測からは現在のGIAの影響に関する拘束条件を与えるデータが得られている。 また、これらの観測結果を説明するため、並行してGIAモデル研究を推進し、GIAモデルのさまざまなパラメータでの感度実験を含めた研究を実施し、過去から現在にいたる変動を説明できる可能性を示す結果が得られた。さらに、異なったアプロ―チとして、衛星重力や衛星高度計、SARデータ解析なども実施し、これらのデータを地上観測データの補正や解釈にも用いるとともに、他の研究班とも協力しながら氷床変動や氷河流動の解析などを進めた。 これらの研究で得られた成果の進捗状況については、国内外の学会等で、随時、報告するとともに、論文化に向けて取りまとめを積極的に進めており、一部についてはすでに学術雑誌等で公表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、COVID-19の影響で、南極での観測が全く実施できなかった上、国内外の学会や研究会等の中止など、研究活動を行う上で多くの制約を受けたが、幸い、本研究では、2019年度までに、昭和基地および周辺のリュツォ・ホルム湾露岩地域での測地学的・地形学的調査、南極外国基地での絶対重力測定、また、マイトリ基地周辺での湖底コアサンプリング・地形調査等も実施しており、すでに多くの観測データを得ていた。そこで本年度は、これまでに得られたデータや資料の解析、またそれらの成果の公表を進めることを中心に研究を進めた。 具体的には、本年度の当初計画として、以下のような研究実施項目を設定した。1)新たにポスドクを雇用し、GIAモデルに関連する研究をさらに加速させる。2)2021年度での南極での絶対重力測定実施を目指し、具体的な方法を検討する。3)取得済みの堆積物等の分析・解析を加速し、他研究班との連携研究を促進する。4)公募研究とも連携しながら、既存の取得データと各種衛星データとの比較・解析をより促進する。 これらの研究項目については、ほぼすべて実施できており、さらに、成果の公表についても、主にリモートで実施された国内外の学会等で積極的に発表するとともに、幾つかの成果については論文化も行なった。これらのことから、研究は順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本計画研究では、2019年度までに、観測面では、昭和基地および周辺のリュツォ・ホルム湾露岩地域での測地学的・地形学的調査、ノルウェーのトロール基地、インドのマイトリ基地、韓国のジャンボゴ基地およびイタリアのマリオズッケリ基地での絶対重力測定等の測地観測、さらに、マイトリ基地周辺での湖底コアサンプリング・地形調査等を実施した。2020年度には、COVID-19の影響で南極での観測を実施できず、データ解析等を中心に、GIAモデリングや衛星データ解析を加速し、成果の取りまとめを中心とした研究を進め、順調に成果が得られている。 2021年度は研究の最終年度であることから、これまでに得られたデータや資料の解析、成果の論文化などを中心に研究を進める予定である。一方、2020年度に予定されていた南極での観測については、本年度での実施をめざし一部予算の繰越も行っており、可能な範囲で実現できるよう努める。 本研究の重要な目的は、現在のGIAの影響に対する拘束条件を与える測地学的データと、氷床融解史など過去のGIAの影響に対する拘束条件となる地質・地形学的データを、GIAモデルを介して融合し、そのことで氷床変動などの理解を進めることであり、最終年度の成果の取りまとめにあたっては、他の計画研究や公募研究との連携を密にしながら、このような視点にたった研究を推進する。
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