研究領域 | 和解学の創成-正義ある和解を求めて |
研究課題/領域番号 |
17H06339
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浅野 豊美 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60308244)
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研究分担者 |
土屋 礼子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00275504)
青山 瑠妙 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (20329022)
米倉 律 日本大学, 法学部, 教授 (20734726)
小菅 信子 山梨学院大学, 法学部, 教授 (30319082)
武井 彩佳 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (40409579)
成田 龍一 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (60189214)
平川 幸子 早稲田大学, 留学センター, 准教授(任期付) (80570176)
丁 智恵 東京工芸大学, 芸術学部, 助教 (90794545)
李 海燕 東京理科大学, 工学部教養, 准教授 (50708196)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 記憶 / 価値 / 感情 / メディア / 価値としての人権 / 国民的矜持 / 国民的自虐 / 価値としての豊かさ |
研究実績の概要 |
研究の目的は、東アジアにおける戦争と日本の植民地支配をめぐる歴史的な過去が、印刷物や放送、映画あるいはインターネットなどの大衆メディアによって、どのような公共的記憶として構築されてきたのか、またそれがいかにメディアによって国民的記憶へと転換され、再生産され語り直され、国民に受容されたのかを、表象と言説の分析、および制作関係者へのインタビュー調査を基にした研究から、明らかにすることにある。インタビューは、テーマそのものでのインタビュー申し込みよりも、共同のイベントの主催等によって進むことがわかった。国際和解映画祭を学生たちと共同で主催するきっかけから、偶然の出会いに依拠する人脈が広がった。 2019年度の定例研究会では、研究分担者それぞれが和解学叢書への寄稿を中心に研究報告を行った。また、「国民的記憶と和解に向けたメディアの可能性」を題に国際シンポジウムを開催した。日本統治下の朝鮮映画と、広島被爆者に関するドキュメンタリー制作過程を題材に、国民の歴史記憶形成過程でメディアが果たした役割を再検討した。植民地映画については、銀盤の上に残された映像がいまや異なる国民となった日韓相互の国民的記憶のズレを埋める可能性や条件を中心に講演していただいた。 さらに、続けて戦後という時代の中心となったテレビというメディアにおいて描かれた戦争をめぐる国民的記憶が、加害の記憶とどのように交錯したのかという問題関心がこの講演から共有された。和解をめぐるキネス旬報やNHKスペシャル番組のデータベースの構築を検討し始めた。また、東アジア歴史紛争和解事典の項目を充実させようとしているところに、コロナが襲って業者との連絡がつかなくなり、延長せざるを得なくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分担者全員は和解学叢書の原稿の執筆を確実に進めている。東アジア歴史紛争和解事典もWEB上に公開され、当該事典の各項目間で有機的連携も実現中であった。その上でさらに、一次資料とのリンクを盛り込みつつ、過去の研究史をわかりやすく紹介できるよう、WEB事典の特徴を生かして編纂作業を進展させようとしていたが、コロナによって中断してしまった。その間、若手研究者を中心に、映画やテレビ番組に関するデータも蓄積されている。学生が主導する国際和解映画祭に貢献することとなり、俳優の小木戸利光のインタービューが活字化され、戦争の記憶に関連した映画がいかに製作されているのかの一端が、明らかにされた。この映画祭は、翌年度に予定されており、映像関係者との接点となるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
提出された原稿を全員が読んで相互に点検することを中心に、メディアがいかに戦争と植民地の記憶を形作ったのかを中心に、この計画班の成果を和解学草書の一環として、社会的に問題提起できるだけのものにする。ウェブサイトのエッセイや東アジア歴史紛争和解事典を通じて世界に発信していく。特に、事典の項目をさらに充実させ、一次資料とのリンクおよび各項目間の連携に注意しながら、その多言語化を図る。その際は、各言語環境下の反応を確認しつつ、コストとのバランスにも配慮して進めていく。 将来は英語による出版に向けて、類似している英語の著作物の内容を精査しながら、研究会を継続する。合わせて翻訳の可能性を検討していく。Zoomという会議システムを使って研究会の開催とネットワークの維持に努める。
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