研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
17H06367
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 昌子 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80214401)
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研究分担者 |
塩塚 理仁 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70293743)
務台 俊樹 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80313112)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 白金錯体 / ベイポクロミズム / 発光 / 結晶 / 刺激応答性 |
研究実績の概要 |
蒸気、温度、機械的刺激などの低刺激に応答する発光性クロミック金属錯体、π電子系有機結晶、発光性超分子等を基盤に、さらなる鋭敏性や高選択性を有する発光性ソフトクリスタルの構築と物性解明、現象の原理探求を目指して以下の課題に取り組んだ。 1)光機能性スマートソフトクリスタルの構築と界面制御による多層構造システムの構築。 1-1.配向制御できる置換基として、カルボキシ基やホスホン酸基を導入した発光性クロミック白金錯体、[Pt(CN)2(L)] (L = ジイミン誘導体)を構築し、蒸気応答性や他の低刺激応答示するいくつかの新規系を見出した。カルボキシ基を搭載した白金錯体では空孔を拡張することにより、異なる蒸気応答性を示すことを見いだした。一方、ホスホン酸基を搭載した白金錯体では、結晶水の脱離状態で逆方向に発光スペクトルがシフトすることを明らかにした。また、メソポーラス有機シリカ担持白金錯体においてこれまでにない高速蒸気応答性も見いだされた。 1-2.VOCセンサーの系統的構築による設計指針確立.一連のジエチニルアリル白金(II)フェナントロリン錯体の選択的揮発性有機化合物(VOC)検出について網羅的に調べ、選択性や特異性を明らかにした。 2)励起状態分子内プロトン移動に基づく刺激応答発光性スマートソフトクリスタルの創成。結晶多形形成が比較的容易なイミダゾピリジン誘導体を構造単位にして、7員環分子内水素結合を形成する系の特長を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は平成29年度に採択され、7月からの研究開始となった。研究体制の構築と機器導入に時間を要したが、実質半年程度の研究期間としては新規系の構築などにおいては順調に成果が得られたものといえる。X線構造解析装置、核磁気共鳴装置、蛍光分光装置等が配備できたので、次年度からは研究の推進に関して加速できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)光機能性スマートソフトクリスタルの構築と界面制御による多層構造システムの構築. これまでに得られた発光性クロミック白金錯体については、今後、バルクの試料の物性解明のみならず、表面配列固定したソフトクリスタルに展開する予定である。担持体として、酸化チタン等のナノ粒子、ガラス基板、メソポーラス有機シリカ(PMO)等を検討する。特に、PMOはメソ孔を有する巨大配位子の観点から興味深い担持体であり、担持白金錯体においてこれまでにない高速蒸気応答性も見いだされた。そこで、今後は、これらの応答機構を構造化学的、分光化学的、計算化学的アプローチに基づき解明する。一方、一連のジエチニルアリル白金(II)フェナントロリン錯体については、選択的揮発性有機化合物(VOC)検出について置換基等の違いによって選択性や特異性が見いだされたので、今後、錯体系列の電子的・構造的相関性を解明する。また、有望なベイポクロミック錯体を用いて、特定の蒸気による発光層と非発光層が接合した多相結晶や薄膜の作成を試み、構造転移の空間的制御を行う。端緒として、ベイポクロミック白金複核錯体を用いてヘテロ界面構築を試みていく。 2)励起状態分子内プロトン移動に基づく刺激応答発光性スマートソフトクリスタルの創成. 結晶多形形成が比較的容易なイミダゾピリジン誘導体を構造単位にして、6員環構造に加えて7員環分子内水素結合を形成する系の確立にも成功したので、今後は置換基に水素結合能を有するアルキルアミドを位置や数を種々変えた系を導入し、それらの超分子構造と励起状態誘起プロトン移動(ESIPT)発光との関連をX線構造解析および計算により明らかにする。これらの系を体系化することにより光励起プロトン移動系のクロミック応答の学理を確立する。
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