研究実績の概要 |
本研究では、ソフトクリスタルが示す様々な新奇現象を理論的に解析するため、金属錯体を扱える結晶力場ポテンシャルを開発すると伴に、有機金属錯体の結晶多形探索を活用し、相転移現象のメカニズム解析を行っている。 (1)A02-0班との共同研究として,フェニル(フェニルイソシアニド)金(I)が示すドミノ型単結晶―単結晶相転移機構を解明するため,イソシアニド金錯体の結晶力場ポテンシャルを決定し,二つの結晶多形構造(IbとIIy)を再現できることを確認した。この結晶力場ポテンシャルを用いて,基準振動解析の結果得られた格子振動(フォノン)モードを用いて動的反応座標解析を行う手法を開発した。これによって,IbからIIyに至るまでの多段階相転移の動力学過程を追跡し,実験では観測できていない結晶多形を見出している。 (2)A01-02 班との共同研究として,有機超弾性を示すテレフタルアミド(TPA)の結晶多形α相とβ相を正しく再現するため結晶力場の検討を行い,TPAの結晶エネルギーポテンシャル表面を明らかにした。さらに,α-β相間の多形転移解析から超弾性現象のメカニズム解析を進めている。 (3)A03-02班との共同研究として,エチレンジアミンで架橋された六座配位子を持つランタニド錯体の結晶構造について,一連のランタニド金属(Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm)に対する結晶力場ポテンシャルを決定し,結晶構造を再現できることを確認した。 (4)領域外共同研究として,ソフトクリスタルと同種の有機金属構造を持つRu(II)-Pheox触媒の配位子交換反応の配置選択的機序を理論的に解明した [ACS Omega 2018, 3, 11286-11289],[Chirality 2019, 31, 52-61]。
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