研究実績の概要 |
本研究では、ソフトクリスタルが示す様々な新奇現象を理論的に解析するため、金属錯体を扱える結晶力場ポテンシャルを開発すると伴に、有機金属錯体の結晶多形探索を活用し、相転移現象のメカニズム解析を行っている。 (1)A03-02班との共同研究として,π電子系のUV/CDスペクトルを求めるため,半経験的分子軌道法であるSCF-CI-DV法において、外部の部分電荷によるクーロン相互作用を導入した新たな手法を開発した。これを用いて、金属錯体やイオンを含む系の結晶中に存在する分子に適用できるようにした[17th International Conference on Chiroptical Spectroscopy, Pisa, Italy, June 23-27, 2019]。 (2)領域外研究ではあるが,結晶構造予測法によって創出された結晶多形構造の回折パターンと,実験で得られた粉末X線回折パターンを比較することによって,膨大な候補多形構造の中から実際に観測されている結晶構造を速やかに特定する方法論を確立した。 [Scientific Reports 10, 2524 (2020)]。 (3)A01-02班との共同研究において,テレフタルアミド(TPA)の結晶ポテンシャルエネルギー面を解析し、有機超弾性現象の過程で現れるα-β相間の多形転移を伴う分子配列と分子間相互作用ネットワークの変化を明らかにした。 (4)A01公募班との共同研究として,軸分子とクラウンエーテルによるロタキサン形成時の協同効果について、量子化学計算を元にその原因を解析している。また、結晶構造未知のロタキサンでのクラウンエーテルの配座探索を行い、安定構造を特定した。 (5)A02-02班との共同研究において,色素連結型アダマンチリデンアダマンタン 1,2-ジオキセタン(1-synと1-anti)の結晶の熱力学的安定性を評価した。その結果、1-anti結晶は1-syn結晶に比べエネルギー的に安定であることが理論的に明らかとなった。
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