計画研究
脂質代謝調節転写因子であるCREBHは脂質代謝改善の方向へ遺伝子発現を調整することを我々は明らかにしてきた。本年度ではCREBHの動脈硬化における機能について解析を行った。動脈硬化モデルマウスであるLDLR KOマウスとCREBH全身ノックアウト(KO)、肝臓特異的(LKO)・小腸特異的(IKO)・肝臓/小腸(DKO)ノックアウトマウスを交配した。CREBHが欠損するすべてのマウスで動脈硬化が進展した。肝臓では脂質合成が、小腸では脂質吸収に異常があるため、脂質代謝異常が生じたと推察している。さらにCREBHの標的であるFGF21との関連を評価するため、CREBH肝臓過剰発現(Tg)マウス、FGF21 KOマウス、LDLR KOマウスを交配した。CREBH Tgマウスでは著しく動脈硬化病巣の減少が観察できる。FGF21を欠損させたCREBH Tg FGF21 KOマウスでも病態改善効果は維持された。つまり、FGF21以外にも病態を改善するメカニズムの存在が示唆された。現在、このメカニズムを明らかにするため、検証を続けている。糖代謝におけるCREBHの機能を検証するために、高フルクトース食を負荷し非アルコール性脂肪肝への影響を検討した。CREBH KOマウスでは脂肪肝を誘導するのではなく、肝障害が惹起された。この際、糖代謝(同化)に機能する転写因子ChREBPの発現が低下していた。ChREBPもFGF21を制御する分子の一つであり、フルクトースが誘導するFGF21上昇はChREBPが律速となっている。本研究でフルクトースによるFGF21の上昇もCREBHが制御するとともに、ChREBPの活性もCREBHが制御することを新たに見出した。
2: おおむね順調に進展している
CREBHの動脈硬化、非アルコール性脂肪肝における機能について論文報告できるまでの解析が終了している。Elovl6やSREBP-1切断酵素についての解析も順調な解析ができている。
今回報告した成果について、論文報告できるよう取りまとめる。SREBP-1の新規活性制御機構に関わる切断酵素を同定しおり、そのメカニズムを検証していく。Elovl6では肝臓特異的KOマウスで生じる肝臓におけるインスリン抵抗性の改善メカニズムについて解析を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 備考 (1件)
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