研究領域 | 予防を科学する炎症細胞社会学 |
研究課題/領域番号 |
17H06395
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島野 仁 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
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研究分担者 |
松坂 賢 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70400679)
中川 嘉 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (80361351)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症 / 線維化 / 糖尿病 / 異質 / 膵臓ラ氏島 / NASH / 未病 / 1細胞解析 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病発症における炎症、線維化と病態の進行の網羅的に把握して新規のメカニズムを知ることが本研究の主題の一つである。 肥満2型糖尿病モデルdbdbマウスの正常対照、糖尿病発症前(6週齢)、発症後(10週齢)の3病態における膵臓ラ氏島を単離して、昨年度まで条件検討の準備を行なっていたsingle cell transcriptome analysis を施行し、 病態に関わる細胞クラスターやマーカーないし責任遺伝子の探索をおこなった。 本年度は、特に病態の本体であるベータ細胞に注目して、正常から未病発症にわたってベータ細胞を5つのクラスターに分離できることを初めて示すことができた。 ベータ細胞で糖尿病態に関与が知られている因子の予想通りの変化が確認されるとともに、未病期にで特異的に上昇する新規の分子が発見され優れた病初期マーカーの可能性を詳細に検討している。 肝臓の脂質代謝と炎症、線維化の関連を探索する目的で実施している新規プロテアーゼ(R4)による脂質種特異的なSREBP-1活性化制御機構の解析では、in vitro実験の結果、 R4が飽和脂肪酸によるSREBP-1の活性化を亢進し、不飽和脂肪酸によるSREBP-1活性化抑制に働くことを明らかにした。また、マウス肝臓を用いたin vivo実験において、不飽和脂肪酸EPAによるSREBP-1 活性化抑制がR4ノックアウトマウスでは減弱することから、EPAによるSREBP-1抑制作用にR4が関わっていることを明らかにした。 さらに脂質分解、ストレス応答転写CREBHのKOマウスの高脂肪食負荷実験の肝臓では、著明に炎症、線維化が悪化し、数ヶ月後には多発性に腫瘍が発生した。今後、NASH-LC-HCCのモデルとして確立後SCTを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の技術的バックボーンであるsingle cell transcriptome analysisは、 組織からの細胞の1つ1つの単離が鍵であり、膵臓ラ氏島のサンプル抽出に当初苦労したが、条件や酵素の改良の結果、非常2つの質の高いサンプルとデータを得られた。 その困難さから、発生期のラ氏島やヒトのサンプルでの報告にかぎられており、新規病初期マーカーの発見を軸に、2型糖尿病モデルにおける初のSCT報告を目指す。 肝臓のSREBP-1の脂肪酸種特異的切断酵素の発見はほぼ解析がすみ投稿を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
膵臓実績の概要に記したように、2型糖尿病の病態にあたらしい解釈を与えるストーリーが見えてきており今後解析する。 また5つのクラスターを病態進行で俯瞰して、遺伝子群パスウェイを検討するとERストレスやER-golgiのソーティングに関する遺伝子が抽出され、炎症、線維化に先行する病態が炙り出された。今後、詳細に解析するとともにベータ細胞以外のクラスターとの相互作用を検討していく。 ベータ細胞のみならず、アルファ細胞、デルタ細胞、PP細胞、内皮細胞、単球マクロファージ系、ストローマ系、ductal, 腺房細胞など多くの細胞種がクラスターとして分類されており、pseudtime 解析、interactome解析を実施予定して、病態との関連を明らかにしていく。 肝臓のSREBP-1の新規特異的切断酵素は、膜タンパクであるが膜の流動性やストレス応答に関わっている様で、今後炎症特に線維化との関連を明らかにしていく。
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