計画研究
上皮細胞の極性の形成や維持は細胞内の極性を持つ輸送(極性輸送)に依存するが、その詳細な機構や経路は不明である。上皮の頂上(アピカル)面への極性輸送に重要なGTP結合タンパクRab8等の欠損マウスでは頂上面に局在する異なる分子が異なる部位に蓄積した。そこで本研究では、哺乳類上皮細胞で、頂上面に向かう異なる分子(GPIアンカー型タンパク質や糖タンパク質)が、細胞小器官内で異なる選別輸送ゾーンを通るか否かを遺伝子ノックイン法と光学・電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、従来ゴルジ体のtrans槽に局在すると考えられている2つの分子が全く異なる分布を示すことを共焦点レーザー顕微鏡で観察した。また、GPIアンカー型タンパク質(GPI-AP)は、スフィンゴ糖脂質とコレステロールとともにマイクロドメインを形成する典型的なタンパク質群である。GPI-APはゴルジ体においてGPIアンカー部分が順次構造変化を受け成熟する。一方、スフィンゴ糖脂質もゴルジ体で生合成される。GPI-APとスフィンゴ糖脂質がどの構造段階で、またどこで出会うのか不明であった。木下らはGPIアンカーの側鎖にガラクトースを付加する酵素が、GM1ガングリオシド合成酵素と同一であること、さらに、GPI側鎖へのガラクトース付加には、ラクトシルセラミドが必要であることを発見した。この結果は、GPI-AP成熟経路とスフィンゴ糖脂質生合成経路は、GM1合成酵素のステップで交差すること、ともに基質であるGM2とGPI-APおよびラクトシルセラミドが、GM1合成酵素が存在するゴルジ槽で出会うことを示している。
2: おおむね順調に進展している
29年度に、原田は従来ゴルジ体のtrans槽に局在すると考えられている2つの蛋白質の遺伝子にtagをノックインすることに成功し、これらが全く異なる分布を示すことを共焦点レーザー顕微鏡で観察することが出来た。木下らはGPIアンカーの側鎖にガラクトースを付加する酵素が、GM1ガングリオシド合成酵素と同一であること、さらに、GPI側鎖へのガラクトース付加には、ラクトシルセラミドが必要であることを発見した。この結果は、GPI-AP成熟経路とスフィンゴ糖脂質生合成経路は、GM1合成酵素のステップで交差すること、ともに基質であるGM2とGPI-APおよびラクトシルセラミドが、GM1合成酵素が存在するゴルジ槽で出会うことを示している。
既に局在が異なることを示したタンパク質については、それら2つのタンパク質が本当にゴルジ体のtrans槽に局在するのか、免疫電顕法と電顕トモグラフィー法を用いて確認する予定である。さらにこれら局在が異なるタンパク質を共局在できるか、薬剤投与などを用いて調べる。またtrans槽に局在するといわれる複数のタンパク質の遺伝子について、tagをknockin法によって導入してそれらの局在の比較を行うが、現在使用できるtagが3xc-mycのみであることから、他のtagの導入を試みる。また、3xc-myc tagはシグナルが弱いため、もっとtagの数を増やしたものを試してみる。木下と共同でGPIアンカータンパクの生合成に関与する遺伝子のゴルジ体での局在を数を増やしたtagを用いて観察し、GPIアンカータンパクがその遺伝子産物が局在する部位を通過するか、Rush systemを用いてGPIアンカータンパクをERから細胞膜に輸送させ、ゴルジ体における通過部位が酵素の局在と一致するか比較する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
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