我々はこれまで、化学振動反応(BZ反応)を利用し、一定条件下で自発的に周期的リズム運動を行う新しい自励振動型の高分子およびゲルを開発した。本研究ではこの自励振動高分子にフォトクロミック部位を導入し、光異性化に伴う電荷量変化をコントロールすることでゲルの膨潤・収縮を制御し、かつ化学反応波の伝播方向制御を試みる。これにより時空間性を持った材料変形や各種生物様運動機能の光制御等、新しい光メカニカル機能材料の構築を目指す。具体的には、光照射により収縮するようなフォトクロミック機能を自励振動ゲルに付与する。このゲル膜上に光をパターン照射すると、表面に化学反応波の伝播が可能な膨潤領域がレリーフ状態として残る。自励振動に伴う化学反応波の伝播によりレリーフ表面上に自発的な蠕動運動が生じるので、このレリーフ上に物質を添加すると、回路パターンに従って自動的に物質が搬送される。レリーフは任意の回路状にパターニングが可能であり、また暗所下で膜全体を膨潤状態に戻して再びパターニングすれば書き換えも可能であることから、輸送方向が時空間的に任意に制御可能な新しい物質輸送表面の実現が期待される。研究期間内でこのような光制御システムの構築を行う。
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