研究概要 |
フォトクロミズムは通常無色体と着色体の間で起きる。着色体の吸収域が赤外部にあれば、皮膚を透過する光を用いてフォトクロミズムを起こすことができるので、ドラッグデリバリーシステムの薬剤放出のトリガーとして赤外光を用いることができるようになる。また、紫外部の二つの光でフォトクロミズムを起こせれば、可視光にさらしてもフォトクロミズムの起きない材料を作ることができる。 前者の、長波長域に吸収をもろフォトクロミック化合物として、ビスアリールインデノンの合成を行い、その開環体も環化体も可視部に吸収のある逆ステルスフォトクロミックシステムの構築に成功した。さらにその分子修飾により、環化の量子収率が非常に大きい化合物を得ることができた。 後者の系として、二つの安定な状態が紫外部にしか吸収をもたない系の構築を目指している。現在、紫外部にのみ吸収をもつ化合物の環化反応がスムースに起き、環化体も紫外部にしか吸収をもたないフルギド誘導体の系を合成することができた。しかし、この化合物の開環反応がスムーズに起きないので、現在これを検討している。この化合物はキラルであり、ネマティック液晶からコレステリック液晶を誘起することができると考えられ, 選択反射によるディスプレイに応用可能である。 また、コレステリック液晶相を誘起するには、フォトクロミック反応が高いジアステレオ選択性をもつことが必要であるが、そのような系を構築することができた。室温で99%de、低温にすると他方のジアステレオマーが観測できない状態(100%de)を達成することができた。これは非常に大きな成果である。
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