2次元系を対象とした知見の蓄積は、ナノ構造制御に立脚した精緻で階層構造を持つ3次元的メカニカル材料創出へ向かう立場からも重要なアプローチであると考えられる。2次元系での光配向、光物質移動、光形態変化に焦点をあて、光メカニカル応答現象を主軸に、関連する新たな光プロセスと機能の探索を進めることを目的とし、研究を進めた。 本年度、ポリシロキサンを片成分とするブロック共重合体で偏光照射による面内の形態制御が初めて可能となった。紫外光照射にてシス体が蓄積された際、ミクロ相分離構造が一旦消失することが面内制御を可能とする要因であると考えられる。 液晶性アゾベンゼンを有するブロック共重合体薄膜にてそのミクロ相分離構造(メソパターン)の光配向とスイッチングを実現している。放射光X線を用いてその動的な挙動をリアルタイムで観測することに成功した。配向変化に伴うスメクチック液晶構造の消失/生成にともなう散乱ピークの変化とミクロ相分離シリンダー構造の消失/生成のそれとは同期していることを明らかにした。 チタニアとアゾベンゼンの液晶性のハイブリッド材料を開発し、僅かな光量にて表面レリーフ形成が可能であること、さらに低圧水銀灯の紫外光照射による光分解と600℃程度の熱分解を経ることによって、ハイブリッドの形状を保持した純粋の無機チタニア(アナターゼ結晶粒)のレリーフ膜が得られることを示した。本年度は有機溶媒によってアゾベンゼン成分を簡便に除去した後に熱分解を行うことによっても、チタニアのレリーフ膜が得られることが分かった。この際、光分解と同程度の熱分解を行なってもアモルファス膜しか得られなかったことから、低圧水銀灯での光照射はチタニアの結晶化を促進させる効果があるものと考えられる。
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