研究概要 |
フォトメカニカル機能を有するジアリールテン分子結晶材料を創製するとともに、これまでにない新しい機能をもつジアリールエテン誘導体を開発することを目的として研究をすすめている。具体的成果は以下のとおりである。 1. 1,2-bis(2-methyl-5-naphthyl-3-thienyl)perfluorocyclopenteneとperfluoronaphthaleneとのmmサイズの長方形板状co-crystalの力学物性を測定した。この結晶を用い、光照射により金属球を持ち上げることを試みた。0.18mgの板状結晶を用いて、110.45mgの金属球を持ち上げることができた。この結果は、1.1mN以上の力が光発生していることを示している。なお、光誘起屈曲の応答速度を、高速カメラで測定したところ、295Kと4.7Kのいずれの温度においても、5μ秒より早く光誘起変形応答することが認められた。また、最大発生応力を測定したところ、44MPaの値が得られた。この値は、生体筋肉の約100倍の値であり、PZTピエゾ素子(~50MPa)に匹敵する発生応力である。 2. 1,2-bis (5-methyl-2-phenyl-4-thiazolyl) perfluorocyclopenteneの側鎖のフェニル基のpara位にメチル基を対称あるいは非対称に導入した誘導体を合成し、それらの混晶を作製し、両者の組成比が光誘起変形にどのような影響をおよぼすかを調べた。両者をほぼ1:1含むmmサイズの棒状混晶において最大の光誘起変形が認められ、耐久性のある可逆な光誘起屈曲を示した。屈曲は、照射する光源に向かって変形し、光源の位置を変えることにより、自在に変形させることができた。この棒状結晶は、自重の900倍の重りを持ち上げることができた。 3. ペリレンビスイミドを有するジアリールエテン誘導体を合成し、そのフォトクロミック反応挙動を評価したところ、可視部のペリレンビスイミドの光励起によっても光閉環反応の誘起されることが認められた。
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