研究概要 |
フォトメカニカル機能を有するジアリールテン分子結晶材料を創製するとともに、新しい機能をもつジアリールエテン誘導体を開発することを目的として研究をすすめた。具体的成果は以下のとおりである。 1.1,2-bis(5-methyl-2-phenyl-4-thiazolyl)perfluorocyclopenteneの側鎖のフェニル基のpara位にメチル基を対称あるいは非対称に導入した誘導体を合成し、それらをほぼ1:1含むmmサイズの棒状混晶を作製し、その光屈曲挙動を観測した。この棒状結晶は、照射する方向に屈曲し、そのヤング率、最大発生応力を測定したところ、それぞれ8.5GPaと56MPaが得られた。この発生応力は、生体筋肉の約180倍であり、ピエゾ素子に匹敵する値である。 2.2種の置換位置の異なる1-(2-methyl-5-phenyl-3-thienyl)-2-(2-methyl-5-naphthyl-3-thenyl)perfluorocyclopenteneを合成し、それらの微小結晶を昇華法により作製し、光誘起変形挙動を観測した。ナフタレンの1位で置換したものは、結晶の対角線方向に拡張し、2位で置換したものは、収縮することが認められた。それぞれの開環体結晶のX線構造解析を行い、これらの変形が、結晶を構成するジアリールエテン分子の幾何構造変化によることを明らかにした。ジアリールエテン結晶の光誘起変形は、分子レベルでの分子の幾何構造変化により解釈することが可能と言える。 3.ペリレンビスイミドを有するジアリールエテン誘導体を合成し、その蛍光スイッチを電子移動機構により行わせることに成功した。このことにより、蛍光の非破壊読み出しが可能となった。 4.1,2-bis(6-phenyl-2-methyl-1-benzothiophen-3-yl)perfluorocyclopenteneのSをスルホン化したところ、その閉環体が量子収率0.8以上の強い蛍光を発することを見出した。
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