計画研究
平成22年度には実用に供する高性能化を目指して、高機能性高速フォトクロミックポリマーの開発を行った。熱消色反応が数秒以内に完了する高速発消色フォトクロミック分子は調光材料や実時間ホログラフィーへの応用が期待されるが、分子設計により熱消色反応速度を任意に調節できれば応用範囲は飛躍的に広がると期待できる。Marcus理論に基づくと、発色体と消色体の標準自由エネルギー差が増大するほど活性化自由エネルギーが減少するため、熱消色速度が加速すると考えられる。この考えをもとにpseudogem-DPI-PI[2.2]PCを設計および合成し、そのフォトクロミック特性を詳細に検討した。pseudogem-DPI-PI[2.2]PCの熱消色反応はpseudogem-bisDPI[2.2]PCと比較して1000倍高速化し、その発色体の半減期は35μsであった。量子化学計算からはpseudogem-DPI-PI[2.2]PCの発色体はPI部位の立体反発によってpseudogem-bisDPI[2.2]PCの発色体と比較して不安定化することが示唆された。以上から、Marcus理論に基づいた高速発消色フォトクロミック分子の熱消色反応高速化設計の妥当性が示された。続いてこのような高速フォトクロミズムを示す主鎖型π共役ポリマーの開発に取り組んだ。溶解性を向上するため新たに分岐アルキル鎖を導入したpseudogem-DPI-PI[2.2]PCモノマーを合成した。さらにpseudogem-DPI-PI[2.2]PCモノマーとアセチレン誘導体を重合することでπ共役ポリマーを得た。得られたポリマーの溶液状態とフィルム状態の熱消色反応速度はマイクロ秒オーダーであり、高速フォトクロミック特性を維持していることが示された。
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http://www.chem.aoyama.ac.jp/Chem/ChemHP/phys3/top/abe.html