研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05707
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野田 展生 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40396297)
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研究分担者 |
福田 善之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任講師 (60571099)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | オートファジー / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
脂質化Atg8は隔離膜に強く結合し、効率的なオートファゴソーム形成において重要な役割を担う。昨年度NMR法を用いることで同定した、膜との相互作用に関わるAtg8内の2つのフェニルアラニンについて変異体解析を行った結果、これらはin vitroにおいて巨大リポソーム膜の変形に重要な役割を担うこと、膜変形は脂質二重層の2つの層の間で面積差が生じることで引き起こされることを見出した。そしてこれらの残基は酵母および哺乳類における効率的なオートファジーに重要であることを明らかにし、Atg8が持つ膜摂動活性がオートファゴソーム形成に重要な役割を担うという新しいモデルを提唱した(Maruyama et al., Nat Struct Mol Biol 2021)。 これまでの研究で我々はAtg2が脂質輸送活性を持つこと、N末端領域に脂質を結合する疎水性ポケットを持つことを明らかにしてきたが、最近公開されたAtg2全長のAlphaFold2予測構造に基づき変異体解析を行なった結果、分子全体にわたって存在する疎水性ポアがAtg2の脂質輸送活性および酵母におけるオートファゴソーム形成に重要であることを明らかにした。 オートファゴソーム形成機構を理解するためには、実際にオートファジーが進行している細胞における膜形態を詳細に明らかにすることが重要である。ラパマイシン処理したAtg8-mNeonGreen発現酵母株を急速凍結したものを試料として、cryo-CLEMによる観察対象の局在の可視化、cryo-FIBで細胞のラメラ(薄片)作製を行った。cryo-TEMでラメラを観察したところ、一般的に知られている形状の隔離膜だけでなく、多層の膜構造を有する隔離膜と思われる構造が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMR解析情報に基づいた機能解析を進めることで、脂質化Atg8に膜摂動活性があること、それがオートファゴソーム形成に重要であることを明らかにした。Atg2に対するAlphaFold2予測構造を活用し、変異体解析によりAtg2分子全体に存在する疎水性ポアが脂質輸送およびオートファジー活性に重要であることを明らかにした。酵母内のオートファジー関連膜をクライオ電子顕微鏡で観察することに成功した。さらに領域内共同研究を推進し、哺乳類の選択的基質であるp62液滴に対する疾患関連変異の影響を解明し、マイトファジーを担う新規因子の新たな活性を発見するなど、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
隔離膜伸長に機能するAtg2-Atg9複合体の構造解析に取り組み、隔離膜伸長のメカニズム解明を進める。哺乳類オートファジー始動複合体の構造基盤の解明を進める。様々な選択的オートファジー受容体の構造研究を進める。膜透過型オートファジーを担う因子の構造解析を進める。昨年に引き続き細胞内における隔離膜の構造解析を進める。
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