研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
19H05804
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梅原 さおり 大阪大学, 核物理研究センター, 特任准教授(常勤) (10379282)
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研究分担者 |
仁木 秀明 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (00135758)
小川 泉 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (20294142)
宮永 憲明 公益財団法人レーザー技術総合研究所, 研究部, 特別研究員1 (80135756)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 二重ベータ崩壊 / 低バックグラウンド / 稀崩壊 / 同位体濃縮 / 蛍光熱量検出器 |
研究実績の概要 |
現在の物質優勢の宇宙の謎を説明するには、CP対称性の破れに加えて粒子数保存則の破れが必要である。二重ベータ崩壊測定によるニュートリノのマヨラナ性の研究は、粒子数保存則の破れに対応するレプトン数保存則の破れを検証する研究である。本計画では二重ベータ崩壊研究のために、1)高純度CaF2結晶を用いた48Caの二重ベータ崩壊測定、を行うとともに、次世代二重ベータ崩壊測定技術開発を行なう。この次世代測定装置開発としては、2)CaF2蛍光熱量検出器開発、3)48Ca同位体濃縮を行う。 まず、1)高純度CaF2結晶開発として、高純度であることを事前に確認をしたフッ化カルシウム原料を用いた結晶を14個作成した。得られたCaF2結晶は、放射性不純物を取り込まないよう各種対応をした上で、CaF2結晶の放射性不純物測定を行った。簡易的な解析では、14結晶すべてにおいて、要求される放射性不純物量10μBq/kg以下をみたした結晶が得られている見込みである。また、3)濃縮技術開発として、本年度は主に、1]原子ビームオーブン、ビームのモニター系の開発、2]高出力紫色レーザーシステムの概念設計、を行った。1]については、効率的な長期運転に備えて1回の充填量10g以上の金属カルシウムをセットできるオーブンを設計・製作した。また、ビームモニター用の膜圧検出器の設置とその性能チェックを行った。既存の偏向度モニター用ドップラーシフト検出器を併用することにより、2次元平面でのモニターが可能になった。また、2]として、高安定な半導体レーザーを多数の安価なレーザーに注入し波長同期を行うことで、高出力となるシステムを考案した。本システムの動作実証のため、422.79 nm波長安定化マスターレーザーの開発を行った。また、1個のスレーブレーザーを用いた波長同期実験を行い、波長変動を4 MHz以下に抑えられることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の構築及び性能評価が遅れているところはあるが、一方、解析的研究は進んでいる。研究課題全体としてはおおむね予定通り進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた48Caの二重ベータ崩壊測定データに対し、各種バックグラウンド低減解析を進める。結果として、48Caの二重ベータ崩壊半減期の下限値を得る。また、大阪において蛍光熱量検出器を動作させ、センサー評価を進める。ほか、新型原子ビームオーブンの周辺整備を進め、これらの装置とシミュレーションとを用いて高効率・高偏向に適したシート状原子ビーム発生装置の開発研究を進める。また、スレーブレーザーの出力として約100 mWの狭線幅レーザー光が得られたものの、短時間で波長同期が外れてしまうことが課題である。今後、スレーブレーザーの安定化方法を開発し、長時間の安定動作を実証する。
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