研究概要 |
(1)極低温マクロ測定:非従来型超伝導を示すPr(Os_<1-x>Ru_x)4Sb12において、結晶場励起エネルギーとラトリング原子振動エネルギーが中間濃度で交差する現象を見出した。この両者の励起が結合した新たなタイプの励起が発現している可能性がある。新物質Pr(Cu,Ga)13の低温磁性を調べ、Γ5三重項基底状態を持つこと、また磁気秩序を示さず低温まで磁気モーメントの揺らぎが残っていることがわかった。 (2)超音波音速測定:Ba(Fe1-xCox)2As2の弾性定数測定を行い、超伝導相に隣接する構造相転移に伴う大きな弾性定数の軟化現象を発見した。詳しい解析からこの弾性軟化現象は最近提案されている軌道秩序のシナリオでよく説明できることが分かった。また56Tまでのパルス磁場中で弾性定数測定のできるシステムの構築を行い、ダイマー系化合物YbAl3C3や八極子転移系SmRu4P12の強磁場磁気相図を得た。 (3)NMRによる多極子秩序の微視的観測:アメリシウム化合物としては世界初となるNMR測定をAmO2において実施し、磁化率の異常から相転移の存在が示唆されていた8.5K付近で、相転移の微視的な証拠を初めて得ることに成功した。多極子秩序の可能性が期待される。また本年度はUPd3の低温でのNQRスペクトルの温度依存性を詳細に測定し、四極子相転移の一次転移的な振る舞いを確認した。 (4)高圧実験:高い静水圧性を示すキュービックアンビルセルを用いて高圧下比熱測定を行うことに成功し、重い電子系物質CeT2Al10,(T=Fe,Ru,Os)の温度・圧力相図を熱的測定によって明らかにした。その結果、約30K付近の未知の相転移は高圧下で1次相転移的に消失することを見いだした。 (5)新物質開発:新しいかご状物質PrTi2Al20の単結晶育成に成功し、四極子転移を示すこと、またPr化合物としては初めて近藤効果があらわれる非磁性基底状態の物質であることを確認した。また、TiサイトをVに置き換えた物質においては、転移温度が0.6Kに抑えられ、転移点以上では顕著な非フェルミ液体性を持つことを見出した。四極子の揺らぎの効果である可能性が高い。
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