研究領域 | 中国文明起源解明の新・考古学イニシアティブ |
研究課題/領域番号 |
20H05822
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 助教 (70749530)
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研究分担者 |
中込 滋樹 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員准教授 (40625208)
石谷 孔司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40826062)
澤藤 りかい 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 日本学術振興会特別研究員(CPD) (50814612)
和久 大介 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (60793578)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | パレオゲノミクス / 新石器時代 / 古人骨 / 東アジア / 中国 / 日本 |
研究実績の概要 |
本年度は、古代ゲノム専用プラットフォームを用いた応用研究および、本プラットフォームに実装する既報の古代ゲノムデータの追加収集を継続した。人骨・動物・堆積物を対象として、各分担者がパレオゲノミクス研究を進めた。人骨のパレオゲノミクス研究においては、コロナ禍の影響がまだ残っていたために、中国内での調査ができない状況が続き、当初の計画であった中国調査はできなかった。この状況に対応するために、日本における古人骨データの取得を進め、中国文明から辺縁地域へのヒトの移動の有無について、さらなる評価を試みた。新石器時代前期から後期に対応する縄文時代の遺跡出土人骨を複数解析した結果、やはり大陸から直接的にヒトが流入してきた痕跡は検出されなかった。また、中国新石器時代の既報ゲノムデータを用いた再解析を進め、中国文明の黎明期におけるヒトの移動復元を行った。その結果、新石器時代後期の中国北部において、黄河流域から西遼河流域へのヒトの移動が検出され、移動した人々は男性が多かった可能性が示唆された。このデータの蓋然性が高いか、さらに詳細な解析を実施して、正確な評価を試みているところである。動物骨の分析では、中国内での調査ができないため、現代の琉球列島における住家性ネズミのゲノムデータを取得することで、中国文明圏からヒトの移動があったかを復元するプロジェクトをスタートさせた。宮古島に生息するクマネズミやハツカネズミからゲノムデータを取得し、大陸からネズミが移動してきたか評価を進めた。最後に、オンサイトでのパレオゲノミクス研究を実施するために、ナノポアシーケンサーを使用した実験系の構築とデータとりを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国国内での資料調査および分析試料のサンプリングを当初計画していたが、コロナ禍後の中国における入国ビザおよび研究ビザの取得が非常に困難になってしまい、調査日程を延期して翌年度に繰越しても、調査ができない状況であった。このため、中国における既報ゲノムデータを古代ゲノム解析プラットフォームで再解析を実施し、中国古代文明のパレオゲノミクス研究を進めることにした。また、堆積物のサンプリングにおいても、中国内におけるサンプリングが現状で困難だったことから、中国と中央アジア間のプロトシルクロードに関連した議論のために、中央アジアにおける遺跡出土土壌のパレオゲノミクス解析をする方向で軌道修正を図った。これらの方針の転換をするために一定の準備が必要であったため、当初の研究計画よりもやや遅れている状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、中国内での調査が引き続き実施できない可能性があるため、新規で中国内で分析試料のサンプリングをしなくとも、新しい視点・データから中国文明の起源およびヒトの移動を復元できないか、軌道修正が必要となっている。本年度に軌道修正したように、国際学術誌から発表されている既報のゲノムデータを別の解析手法を適用することで、新しい視点でのヒトの移動の評価が可能である。既に公開されている人骨・動物骨のデータについて再解析を進め、新しい課題設定のもので研究を実施していく必要があると考えている。また、本研究は古代ゲノム解析プラットフォーム開発を目的としているため、オンサイトでのパレオゲノミクス研究を実現させるための基礎研究にも注力していき、近い将来にオンサイトパレオゲノミクスをアジアにおいて適用していくことで、古代文明研究の議論を展開したいと考えている。この技術開発を今後さらに注力し、研究を加速させていく予定である。
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