研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
20H05842
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
村上 達也 富山県立大学, 工学部, 教授 (90410737)
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研究分担者 |
沼田 朋大 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20455223)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞膜電位 / 膜融合 / 配向制御 / 脂質ナノ粒子 / ドラッグデリバリー |
研究実績の概要 |
ドナー-アクセプター連結分子(D―A分子)による視神経細胞活動の光操作に向けて、D-A分子の(1)細胞膜内輸送と(2)細胞膜内異方的配置(D部分は細胞内側,A部分は細胞外側)に注力した。光操作、具体的には光誘導細胞膜電位制御(脱分極)自体はすでに成功しているが、関与するイオンチャネルの開閉速度(ミリ秒オーダー)に比べて、その制御速度が極めて遅い(秒オーダー)という課題を解決する。 今年度は昨年度に続いて、(1)を実現するためのD-A分子輸送キャリアの開発に注力した。キャリアはこれまでの研究で用いてきた高密度リポタンパク質改変体(nanodisc, ND)を膜融合性脂質を用いて作製した。この膜融合性改変体(fusogenic ND, fND)と既存のNDに既報で用いたD-A分子(TC1)を搭載させることを試みたが、fNDだけでなくNDにおいても1粒子あたり1分子も搭載できなかった。この理由として、用いたTC1がDMSO溶液中で長期間保存されていたもの(現在入手可能な唯一のD-A分子)であるため、何らかの物性変化が生じたものと考えられた。 次に(2)についてモデル実験を行った。D-A分子の細胞膜内異方的配向を実現するために、A部分のフラーレンとπ-π相互作用するアンカー分子(pyrenebutyrate, PyB)を使用した。まず細胞膜のモデルとしてリポソームを用い、PyBがその脂質膜表層へ挿入されることをゼータ電位測定(負に帯電)により確認した。D-A分子のモデルとしてカチオン化フラーレン(CatC60)を用い、PyB搭載リポソームに作用させた。CatC60の脂質膜内挿入を示唆走査熱量測定で評価したが、相転移温度の変化・消失は検出されず、現状の実験条件ではPyBとCatC60のリポソーム膜存在下での相互作用を確認することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
D-A分子の細胞膜内輸送および細胞膜内異方的配置が、本研究課題の重要な課題だが、それらに対応するための実験、つまりD-A分子の新しいキャリア(fND)への搭載という最初期段階の実験、リポソーム膜中でのPyBとCatC60の相互作用の確認、がいずれも上手くいっていない。いずれにおいて、使用できるD-A分子(TC1)の量が極めて限られており、また本計画で提案してる改良型D-A分子の合成が未達なため、広範な条件検討を行えないという状況が影響している。
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今後の研究の推進方策 |
D-A分子の細胞膜内輸送については、D-A分子搭載体を使用せず、fNDを含む多様なNDを作製し、細胞膜接着・融合を指標として評価を進める。さらにマウスに点眼し、膜膜吸収効率、網膜輸送効率も評価する。一定の時点で、残存するTC1を用いてTC1搭載体を作製し、膜電位操作実験を研究分担者の沼田博士(秋田大院医)に依頼する。 D-A分子の細胞膜内異方的配置については、CatC60のリポソームへの搭載条件を検討し、脂質膜内でのPyBとCatC60の相互作用を実証することを目指す。D-A分子が新規に供与されれば、D-A分子を用いた実験を行う。
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