動物個体の生と死との間には、厳密な境界が存在するはずだがその判断基準には多分に哲学的な要素が含まれ、何をもって個体が死んだと定義するかについてはいまだ明確な結論が出ていない。本研究では、動物が死んだ際に放出する化合物や死と直結するような天敵から放出される匂いがどのように脳内で処理されるのかを解明することを目指した。その結果、死に関連する匂いは、グルーネバーグ神経節と呼ばれる特殊な感覚器で検知され、その情報は、一般的な嗅覚皮質に加え、扁桃体梨状皮質移行領域と呼ばれる領域で処理された後、恐怖や不安といった情動反応を制御する扁桃体へと送られ、個体の持続的な防御反応を惹起することが分かった。
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