• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実績報告書

Heroタンパク質の動作機構解明と神経変性疾患への適用

計画研究

研究領域非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略
研究課題/領域番号 21H05278
研究機関東京大学

研究代表者

泊 幸秀  東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (90447368)

研究分担者 岡野 栄之  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60160694)
研究期間 (年度) 2021-09-10 – 2026-03-31
キーワードHeroタンパク質 / 天然変性タンパク質 / 神経変性疾患 / 非ドメイン型バイオポリマー / ALS
研究実績の概要

Heroタンパク質がクライアントタンパク質に与える分子レベルの影響を調べるため、ALSの病原性凝集体形成に関わるTDP-43を、クライアント分子のモデルとして用い、分子内の任意の2カ所に蛍光色素を導入して、その一分子Forster共鳴エネルギー移動 (FRET) を測定した。その結果、Heroタンパク質は、古典的なシャペロンであるDNAJと同様、TDP-43の構造を大きく変化させていることが判明した。また、細胞の生存を指標として、CRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーを利用したゲノムワイドなスクリーニングを行い、細胞機能維持に必要な超天然変性タンパク質群を網羅的に同定することに成功した。また、Heroタンパク質の神経変性疾患への適用に向けて、神経細胞におけるHeroタンパク質群の影響を精緻に評価できる疾患モデルを構築を目指した。まず、非神経細胞質内のTDP-43蓄積に対して、阻害活性を有することが分かっているHeroタンパク質を神経細胞内に導入するために、蛍光レポーターを同時に発現するFLAG-Heroレンチウィルスベクターを作製した。健常者ならびにALS患者iPS細胞由来運動ニューロンを迅速誘導法により作製し、当該ベクターを感染させたところ、細胞内での蛍光タンパク質の発現を確認した。その後、iPS細胞由来運動ニューロンに最適なプロモーターおよび蛍光レポーターの組み合わせを探索した。さらに、IN Carta/SINAPプラットフォームを用いた深層学習による細胞内構造物の評価および細胞分類パイプラインについても確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画していた目的の通り、Heroタンパク質がクライアントタンパク質に与える一分子レベルでの影響の解析や、細胞生存に重要な新規Heroタンパク質群の網羅的探索、さらには、神経変性疾患への適用を目指した疾患モデルの構築のすべての項目について、顕著な研究の進展が見られた。よって、研究計画は順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

Heroタンパク質がTDP-43に与える1分子レベルの影響をとらえることができる実験系の構築に成功したことに基づき、今後は家族性ALS患者にみられる病原性点変異を導入したTDP-43変異体を用いて、野生型TDP-43の振る舞いと比較することによって、病原変異がTDP-43の一分子レベルでの構造に与える影響、さらには、それに対してHeroタンパク質が及ぼす効果を明らかにする。また、CRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーを利用したゲノムワイドなスクリーニングから、細胞機能維持に必要なHeroタンパク質を多く同定したため、それら個別の生理機能や分子機能の詳細な解析を進める。また、SeVベクターを用いた新規運動ニューロン迅速誘導法を用いて、健常者およびALS患者由来iPS細胞から運動ニューロンを安定的に作製し、レンチウィルスを用いてHeroタンパク質を細胞内に導入し、その挙動を評価する。また、より効率的かつ細胞毒性を低減したトランスフェクションを達成するために、レンチウィルスに搭載するコンストラクトの改良、およびセンダイウィルスべクターを用いた標的タンパク質の導入法を開発する。安定した標的タンパク質の細胞内発現系が得られたのち、Heroの細胞内での挙動や、異常蓄積タンパク質とのインタラクション、凝集体への効果を確認する。また、より最適な系構築のために、異常細胞質内へのTDP-43の蓄積を促進させるヒトALSモデルとして、CRSPR-Cas9システムを用いてΔNLS-TARDBP iPSCを作製する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)

  • [国際共同研究] 上海科技大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      上海科技大学
  • [雑誌論文] Life of RISC: Formation, action, and degradation of RNA-induced silencing complex2022

    • 著者名/発表者名
      Iwakawa Hiro-oki、Tomari Yukihide
    • 雑誌名

      Molecular Cell

      巻: 82 ページ: 30~43

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2021.11.026

  • [雑誌論文] iPSC-based disease modeling and drug discovery in cardinal neurodegenerative disorders2022

    • 著者名/発表者名
      Okano Hideyuki、Morimoto Satoru
    • 雑誌名

      Cell Stem Cell

      巻: 29 ページ: 189~208

    • DOI

      10.1016/j.stem.2022.01.007

    • 査読あり
  • [学会発表] Heroタンパク質はヒーローのように働くか?2022

    • 著者名/発表者名
      泊 幸秀
    • 学会等名
      バイオテクノロジー懇談会
    • 招待講演
  • [学会発表] iPSCs-based modelling, drug development and clinical trials for ALS2021

    • 著者名/発表者名
      岡野 栄之
    • 学会等名
      PACTALS 2021 NAGOYA
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] IPSCS-BASED MODELING, DRUG DEVELOPMENT AND CLINICAL TRIALS FOR ALS2021

    • 著者名/発表者名
      岡野 栄之
    • 学会等名
      ISSCR/JSRM International Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] iPSCs-based Cell Therapy and Disease modeling, drug development and clinical trial2021

    • 著者名/発表者名
      岡野 栄之
    • 学会等名
      2021 Global Hybrid Conference
    • 国際学会 / 招待講演

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi