研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
22122005
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
榎本 秀樹 独立行政法人理化学研究所, 神経分化・再生研究チーム, チームリーダー (00360511)
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キーワード | 腸管神経系 / 神経堤細胞 / 細胞移動 / 血管発生 / CXCR4 / ケモカイン / タイムラプスイメージング |
研究概要 |
大腸神経系は、発生過程で小腸と大腸が血管を挟んで平行に並ぶ時期に、小腸壁から遊離して血管を足場に大腸まで近道移動する腸管神経堤細胞(trans-mesenteric ENCC, tmENCC)により形成される。すなわち大腸神経系の発生は神経系と血管系の協調した発生に依存する。tmENCCの移動機構の解明には、tmENCCの細胞の振る舞いや遺伝子発現を多角的に解析し、他の腸管神経堤細胞との違いを詳細に比較検討する必要がある。 腸管血管の形成とtmENCCの移動の関連を明らかにするために、腸管血管の分岐異常を呈する1. CXCR4(ケモカインSDF1/CXCL12の受容体)ノックアウトマウスを解析した。その結果、一部の胎児において大腸側に移動するが減少していることを見いだした。しかし、CXCR4の発現はtmENCCを含む全ての腸管神経堤細胞に認められず、血管内皮細胞に限局していた。また、多色タイムラプスイメージングにより血管内皮と腸管神経堤細胞の発生を同時に観察したところ、2種間の細胞の移動パターンには直接的な関連は見いだせなかった。 以上の結果は、CXCR4を介したケモカインのシグナルは直接に腸管神経堤細胞に影響せず、腸管血管の正常発生を誘導することでtmENCCの移動を間接的に支持している可能性を示唆している。また、これらの結果は、CXCR4のノックアウト腸管における遺伝子発現変化を解析することにより、血管由来のtmENCC移動制御因子を同定出来る可能性を示唆していた。 2.前年度に作成したEdnrb-BrainbowHマウスをタイムラプスイメージング解析し、ENCCを一細胞レベルで可視化する技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた遺伝子改変マウス作成が滞りなく行われている。多色タイムラプスイメージングの手法も確立した。
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今後の研究の推進方策 |
CXCR4ノックアウトマウスの解析で、腸管神経と血管の発生における相互作用が確立されたと同時に、このマウスが相互作用におけるシグナル分子を同定するのに重要な材料となる可能性が示唆された。今後は、発生過程の血管内皮より供給される細胞外環境因子について更なる検討を加える。
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