研究概要 |
われわれヒトを含めた脊椎動物は、頭から体の背中側にかけて脳と脊髄から成る中枢神経系を持っている。中枢神経系の形成は、体の背中側にできる神経板と呼ばれる板状の組織が体の内側にくぼんで溝(神経溝)を作り、神経管と呼ばれる管状の構造に変形が引き金となっている。この神経管の形成運動はヒトからトリ、カエルに至る脊椎動物でほぼ同じように起こり、多くの脊椎動物に共通する、中枢神経系を作るための重要なステップであると考えられている。神経管形成時の神経板では、細胞の表層近くが大きく収縮してくさび形に変形する。この変形が個々の神経板細胞で起こることによって、神経板全体が体の内側にくぼんで神経溝を作る運動に変わる。本研究ではこの細胞形態の変化(細胞形態形成)の分子・細胞機構を明らかにし、神経管形成時に発生する力の予測をすることを目的とした。この細胞形態形成の過程では、アクチンタンパク質が頂端(表層)側に集積して、それが収縮することで神経板細胞がくさび形になると考えられている。本研究では、細胞膜上にある2種類の細胞接着タンパク質ネクチンとN-カドヘリンが相互作用すること、またそれらの協調によって神経板の細胞のアクチンが表層側に集積する仕組みを明らかにした(Morita, et al., Development, 2010)。また、それ自身は神経にはならない非神経外胚葉の管形成における役割についても解析を行い、非神経外胚葉の深層の細胞集団の背側への移動が神経管閉鎖に重要であることを見出した(論文準備中)。
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