計画研究
アーバスキュラー菌、根粒菌と植物の両方向から遺伝子ネットワークの相互作用を解析するため、HiSeq2000を用いてそれぞれの共生時におけるミヤコグサのトランスクリプトーム解析を行った。共生初期に変動する遺伝子は根粒で284遺伝子、菌根で330遺伝子同定し、その中で共通しているのは11遺伝子と非常に少ないことがわかった。また菌根においてはミヤコグサゲノムにマップされなかったリードを集め、Trinityを用いることでde novo transcriptome assemblyを行いAM菌のトランスクリプトを明らかにした。200 bp以上のcontigは76,697個あり、BLASTXやGC含有率からAM菌由来の26,253のcontigを同定できた。菌根共生シグナル分子に応答したカルシウム振動の解析を行った。菌根菌胞子浸出液処理によりカルシウム振動の誘導はみることができなかったため、菌根菌の共生シグナル分子であると考えられるMyc-LCOを大阪府立大学 秋山康紀博士より分与していただき、この分子への応答反応を解析したところ、カルシウム振動の誘導を確認できた。根粒非着生でかつ茎頂メリステム(SAM)に異常示すミヤコグサ新奇変異体を単離し、分子遺伝学的な解析を行った。この変異体では根粒原基形成と根粒菌感染プロセスの両過程に異常がみられることを明らかにした。ポジショナルクローニングにより原因遺伝子を特定したところ、他の植物において報告されているSAM形成に関わる遺伝子のオルソログがこの変異体の原因遺伝子であることを突き止めた。マメ科植物に形成される根粒数は、根粒菌の感染によってCLE遺伝子が誘導され、HAR1-KLVシグナル経路が活性化されることにより負に遠距離制御されている。この制御機構に関する数理モデルを構築した。
1: 当初の計画以上に進展している
次世代シークエンサーを使ったトランスクリプトーム解析が計画以上に進み、アーバスキュラー菌根共生と根粒共生の初期と後期で発現する遺伝子の全容が明らかにされた。その中には、今後の解析において重要となりうる機能未知の鍵遺伝子も含まれていた。一方、サイトカイニンシグナルの下流で機能しかつ根粒形成とメリステム形成の両者に異常を示す新規変異体を単離し、その原因遺伝子を特定することに成功した。根粒という新規複合形質の進化を明らかにする鍵遺伝子となることが期待される。
根粒形成の進化基盤の解明については、根粒と茎頂メリステムの双方の制御計系に必要とされる遺伝子が次々と見つかってきた。このことは根粒が茎頂メリステムの制御系をco-optすることによって進化してきたことを示唆している。さらに詳細に根粒形成の制御ネットワーク等を解明することにより、根粒の進化基盤を解明する。アーバスキュラー菌根菌のゲノム解読については、国際コンソーシアムとの連携をどのようにするかを検討する必要がある。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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