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2011 年度 実績報告書

アーバスキュラー菌根共生系から根粒共生系への進化基盤の解明

計画研究

研究領域複合適応形質進化の遺伝子基盤解明
研究課題/領域番号 22128006
研究機関基礎生物学研究所

研究代表者

川口 正代司  基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 教授 (30260508)

研究分担者 齋藤 勝晴  信州大学, 農学部, 准教授 (40444244)
キーワードアーバスキュラー菌根菌 / 共生 / 進化 / 根粒共生系
研究概要

アーバスキュラー菌、根粒菌と植物の両方向から遺伝子ネットワークの相互作用を解析するため、HiSeq2000を用いてそれぞれの共生時におけるミヤコグサのトランスクリプトーム解析を行った。共生初期に変動する遺伝子は根粒で284遺伝子、菌根で330遺伝子同定し、その中で共通しているのは11遺伝子と非常に少ないことがわかった。また菌根においてはミヤコグサゲノムにマップされなかったリードを集め、Trinityを用いることでde novo transcriptome assemblyを行いAM菌のトランスクリプトを明らかにした。200 bp以上のcontigは76,697個あり、BLASTXやGC含有率からAM菌由来の26,253のcontigを同定できた。
菌根共生シグナル分子に応答したカルシウム振動の解析を行った。菌根菌胞子浸出液処理によりカルシウム振動の誘導はみることができなかったため、菌根菌の共生シグナル分子であると考えられるMyc-LCOを大阪府立大学 秋山康紀博士より分与していただき、この分子への応答反応を解析したところ、カルシウム振動の誘導を確認できた。
根粒非着生でかつ茎頂メリステム(SAM)に異常示すミヤコグサ新奇変異体を単離し、分子遺伝学的な解析を行った。この変異体では根粒原基形成と根粒菌感染プロセスの両過程に異常がみられることを明らかにした。ポジショナルクローニングにより原因遺伝子を特定したところ、他の植物において報告されているSAM形成に関わる遺伝子のオルソログがこの変異体の原因遺伝子であることを突き止めた。マメ科植物に形成される根粒数は、根粒菌の感染によってCLE遺伝子が誘導され、HAR1-KLVシグナル経路が活性化されることにより負に遠距離制御されている。この制御機構に関する数理モデルを構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

次世代シークエンサーを使ったトランスクリプトーム解析が計画以上に進み、アーバスキュラー菌根共生と根粒共生の初期と後期で発現する遺伝子の全容が明らかにされた。その中には、今後の解析において重要となりうる機能未知の鍵遺伝子も含まれていた。一方、サイトカイニンシグナルの下流で機能しかつ根粒形成とメリステム形成の両者に異常を示す新規変異体を単離し、その原因遺伝子を特定することに成功した。根粒という新規複合形質の進化を明らかにする鍵遺伝子となることが期待される。

今後の研究の推進方策

根粒形成の進化基盤の解明については、根粒と茎頂メリステムの双方の制御計系に必要とされる遺伝子が次々と見つかってきた。このことは根粒が茎頂メリステムの制御系をco-optすることによって進化してきたことを示唆している。さらに詳細に根粒形成の制御ネットワーク等を解明することにより、根粒の進化基盤を解明する。
アーバスキュラー菌根菌のゲノム解読については、国際コンソーシアムとの連携をどのようにするかを検討する必要がある。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Reaction-diffusion pattern in shoot apical meristem of plants.2011

    • 著者名/発表者名
      Fujita H, Toyokura K, Okada K, Kawaguchi M.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 6 ページ: e18243

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0018243.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Clavata2 genes of pea and Lotus japonicus affect autoregulation of nodulation.2011

    • 著者名/発表者名
      Krusell L, Sato N, Fukuhara I, Koch B, Grossmann C, Okamoto S, Oka-Kira E, Otsubo Y, Aubert G, Nakagawa T, Sato S, Tabata S, Duc G, Parniske M, Wang T. L, Kawaguchi M, Stougaard J.
    • 雑誌名

      Plant Journal

      巻: 65 ページ: 861-71

    • DOI

      10.1111/j.1365-313X.2010.04474.x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Strategy for shoot meristem proliferation in plants.2011

    • 著者名/発表者名
      Fujita H, Kawaguchi M.
    • 雑誌名

      Plant Signaling Behavior

      巻: 6 ページ: 1851-1854

    • DOI

      10.4161/psb.6.11.17656.

  • [雑誌論文] The evolution of symbiotic systems.2011

    • 著者名/発表者名
      Kawaguchi M.
    • 雑誌名

      Cellular and Molecular Life Sciences

      巻: 68 ページ: 1283-4

    • DOI

      10.1007/s00018-011-0647-0.

  • [雑誌論文] Expression and functional analysis of a CLV3-like gene in the model legume Lotus japonicus.2011

    • 著者名/発表者名
      Okamoto S, Nakagawa T, Kawaguchi M.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 52 ページ: 1211-21

    • DOI

      10.1093/pcp/pcr071.

    • 査読あり
  • [学会発表] マメ科植物-根粒菌共生システムにおける窒素固定能の進化モデル

    • 著者名/発表者名
      藤田浩徳、川口正代司
    • 学会等名
      日本進化学会第13回大会
    • 発表場所
      京都大学百周年時計台記念館(京都)
  • [学会発表] 根粒形成の遠距離抑制で働く2つ目の受容体様キナーゼとCLR-RS1/2シグナリング

    • 著者名/発表者名
      宮澤日子太、岡本暁、吉良(岡)恵利佳、川口正代司
    • 学会等名
      日本植物学会第75回大会
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパス(東京)
  • [学会発表] マメ科植物-根粒菌共生システムにおける窒素固定能の進化モデル

    • 著者名/発表者名
      藤田浩徳、川口正代司
    • 学会等名
      第21回数理生物学会大会
    • 発表場所
      明治大学リバティータワー(東京)
  • [学会発表] 茎頂分裂組織パターンの数理モデル解析

    • 著者名/発表者名
      藤田浩徳、豊倉浩一、岡田清孝、川口正代司
    • 学会等名
      日本植物学会第75回大会
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパス(東京)
  • [学会発表] 茎頂分裂組織パターン形成におけるCLV3とWUSの空間的発現隔離の影響に関する数理モデル解析

    • 著者名/発表者名
      藤田浩徳、川口正代司
    • 学会等名
      第53回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都)
  • [学会発表] 根粒および茎頂メリステム形成に関与するミヤコグサ突然変異体の遺伝学的解析

    • 著者名/発表者名
      壽崎拓哉、川口正代司
    • 学会等名
      第53回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都)
  • [学会発表] 根粒共生変異体の表現型再評価により固定した新規菌根共生変異体の解析

    • 著者名/発表者名
      武田直也、Parmiske Martin、川口正代司
    • 学会等名
      第53回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都)
  • [備考] 基礎生物学研究所 共生システム研究部門(川口研究室)

    • URL

      http://www.nibb.ac.jp/miyakohp/index.html

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公開日: 2015-05-28  

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