研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
22131006
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
河野 隆志 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80280783)
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研究分担者 |
荻原 秀明 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40568953)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | がん / クロマチンリモデリング / ヒストンアセチル化 / がん治療 / DNA切断修復 |
研究概要 |
1. ヒトがんおけるクロマチンリモデリング遺伝子群の異常の解析:肺がん組織及び細胞株の遺伝子変異解析・免疫染色解析の結果、EGFR, KRAS, ALK, FGFR1等の分子治療標的となるがん遺伝子異常陰性の肺がんで、SWI/SNF複合体の触媒サブユニットをコードするBRG1/SMARCA4遺伝子の欠損、発現低下が集中的に生じていることを明らかにした。よって、BRG1変異がんに対する治療法の開発が有効であることが示唆された。 2. BRG1失活がん細胞の特異的殺傷法の探索:BRG1と合成致死の関係にある分子として、その機能的ホモログであるSWI/SNF複合体の触媒サブユニットBRM/SMARCA2を同定した。複数のBRG1欠損がん細胞に対して特異的に、RNA干渉によるBRM阻害は不可逆的な細胞老化を引き起こした。BRM阻害に対する感受性の相補にはBRM-ATPase活性が必要であることを見出した。製薬企業との共同研究によりBRMタンパク質のATPase阻害剤のスクリーニングに着手した。 3. CBP・p300ヒストンアセチルトランスフェラーゼの解析:ウコンの成分でありCBP・p300タンパク質阻害活性を持つクルクミンがATR-CHK1 シグナル経路の阻害等を介して、PARP阻害剤の増感効果を持つことを明らかにした。 4. クロマチンリモデリング遺伝子群の失活がん細胞の特異的殺傷法の探索:ARID1A, CBP/p300等の失活変異を有するがん細胞株に対し、キナーゼやクロマチンリモデリング遺伝子siRNAによる網羅的増殖抑制実験等を行い、いくつかの合成致死候補遺伝子群を複数個同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
クロマチン制御遺伝子BRG1/SMARCA4のがんでの異常の特徴や特異的治療法の開発に成功しており、企業との阻害剤スクリーニングへの展開も成功している。よって、記載すべき問題点は生じておらず、研究は予定以上に順調に進行していると判断する。今後は、他のクロマチン制御遺伝子についても、がんでの異常の特徴や特異的治療法の開発に着手したい。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヒトがんゲノム解析:BRG1/SMARCA4以外のクロマチン制御遺伝子について、発がんや治療への関わりを明らかにするため、高速シークエンサを用い、肺がん等の臨床検体や細胞株のクロマチンリモデリング遺伝子の網羅的な遺伝子変異の探索を行う。また、がんにおける染色体再構成部位のゲノム構造から、発がんにおけるクロマチン・DNA切断修復制御の異常について推察する。 2. BRG1失活がん細胞の特異的殺傷法の探索:BRG1失活変異がん細胞、発現低下がん細胞における、BRM阻害の影響を明らかにすることで、抗BRM治療の対象群を推定する。製薬企業との共同研究により、BRMタンパク質の阻害剤探索を継続して行う。 3.クロマチンリモデリング遺伝子群の失活変異を有するがん細胞の特異的殺傷法の探索:CBP遺伝子変異を有するがん細胞株に対し、阻害が合成致死をもたらす有力な候補酵素遺伝子を一つ同定している。そこで、RNA干渉細胞や遺伝子人工ノックアウト細胞等を用い、合成致死をvalidationする。また、合成致死をもたらす分子機構や強い致死をもたらすCBP変異種を明らかにする。 領域内共同研究者との共同研究により、クロマチンリモデリング遺伝子群の機能に関して情報交換を行いながら、効率的かつ合理的な治療法を追究する。
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