計画研究
前年度までに、HLA-DP5とスギ花粉症抗原ペプチドpCry j 1複合体の結晶構造を決定し、構造学的・進化学的解析から、HLA-DP5が進化の過程で獲得した酸性のP1ポケットが相関する抗原ペプチドの塩基性側鎖を高頻度で係留する点を明らかにした。本年度は、DP5の相同体であるDP2において、P4ポケットがDP5のP1ポケットと同様に酸性で塩基性側鎖を結合することを明らかにした。HLA-DPは進化過程でDP5とDP2の形質を有する2つのグループに分岐し、多種多様な抗原ペプチドを受容するために酸性ポケットと塩基性側鎖に関する多様性を獲得したことを結論付けた。また、上述の複合体構造に基づき、pCry j 1を上回る結合親和性を持つ阻害ペプチドの設計を行った。具体的には、pCry j 1の隣接領域に変異を導入した仮想ペプチドを作成し、結晶構造に基づいて初期配座を決め、分子動力学計算による結合親和性予測を行い、合成と評価の候補となるペプチドを提案した。更に、HLA-DP5とN末端側の隣接領域を含むpCry j 1との複合体構造を決定した。収容溝内におけるpCry j 1の認識機構は、上述の隣接領域を含まないpCry j 1との複合体構造と同じであったが、結晶中における2次元的な分子会合体が、隣接領域を含むpCry j 1による「留め金」作用により形成されるという驚くべき違いを見出した。この会合体の生理的な意義を検証するため、HLA-DP5陽性のスギ花粉症患者末梢血から隣接領域を含むpCry j 1を拘束するT細胞クローンを樹立しT細胞活性化実験を実施した。隣接領域が含まれる場合にはT細胞活性が著しく増強し、含まれない場合は減弱した。一方、会合体中において、DP5との相互作用に関与する隣接領域に反発変異を導入したところ、著しく減弱した。以上より、隣接領域を利用して構成される会合体形成は、全く新規の概念であり、かつ、機能的にも極めて重要であることが示された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Journal of Molecular Biology
巻: 426 ページ: 3016-3027
10.1016/j.jmb.2014.06.020