研究領域 | 超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
22H05145
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
杉本 邦久 近畿大学, 理工学部, 教授 (00512807)
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研究分担者 |
木内 久雄 東京大学, 物性研究所, 助教 (50818557)
南部 雄亮 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60579803)
稲田 幹 九州大学, 中央分析センター(筑紫地区), 准教授 (40624979)
木本 浩司 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 拠点長 (90354399)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | 超セラミックス / 高度構造解析 / 共鳴非弾性X線散乱 / 中性子散乱 / 電子顕微鏡 / 放射光 |
研究実績の概要 |
本研究では、超セラミックスの構造解析法の精密化を通じて、超セラミックスの巨視的および局所的な構造だけでなく、動的構造を包括的に理解し、超セラミックスの創製から機能発現までの全体像を明らかにすることを目指している。この目標を達成するために、2022年度に培った計測基盤を活用し、放射光と中性子を用いた精度の高いデータに基づく研究を推進している。 本年度の研究成果の例として、放射光では、超セラミックスに関連した有機共結晶体の高圧化による構造解析を通じて、耐性を議論することが可能となり、今後、分子設計によって物性を調整し、光電変換、分子認識、触媒機能などの応用への展開が期待できることを明らかにした。また、中性子では、凝縮系物質の磁性研究に適用される偏極中性子散乱計測のための中性子偏極補正を導出し、実験的にY3Fe5O12の中性子スピン偏極子やフリッパーの非効率パラメータを決定することに成功した。化学結合状態の解析では、ペロブスカイト型化合物(BZT)とダブルペロブスカイト型化合物(BZW)のプロトン伝導性オキシ水酸化物における水酸化物イオンの結合状態に関してFT-IRを用いた測定を行い、BZTとBZWのプロトンサイトの親和性の違いを明らかにした。さらに、走査透過電子顕微鏡(STEM)では、教師なし機械学習技術と組み合わせることで、ナノメートルの空間分解能で包括的な結晶構造解析が可能になった。超高分解能共鳴非弾性X線散乱においては、東北大学青葉山新キャンパスに建設されたNanoTerasuの運転が開始され、軽元素種に最適化された非点収差制御ミラー及び回折格子を導入することにより、SPring-8から移設した装置を基盤とした超高分解能共鳴非弾性X線散乱の世界最高性能を目指した装置の構築に着手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題を達成するために、放射光X線を用いた回折だけでなく、共鳴非弾性X線散乱、中性子散乱、電子顕微鏡、核磁気共鳴、ラマン散乱等の先端計測手法を協奏的に最大限活用し、合成プロセスや動作時のその場観察構造計測により超セラミックスの全体像の解明に挑戦した。本年度は、以下の研究計画の課題について取り組んだ。 ・巨視的・局所的評価を主眼とした構造解析について放射光及び中性子施設を活用し、構築した相補的な構造解析に基づいた外場下でのその場観察や解析に必要とされる補正法の導出を行った ・2024年より運転が開始されたNanoTerasuにおいて、超高分解能共鳴非弾性X線散乱による化学状態解析を構築するため、SPring-8より移設した装置を基盤とする軽元素種に最適化した装置の開発を推進 ・反応・機能その場観察による超セラミックスの可視化を実現するため、分子ユニットの配位環境、原子配列秩序、化学結合状態の解析における巨視的・局所的な構造評価との複合解析の基盤の構築を継続的に推進 いずれの研究計画の課題においても、B01班内だけでなく、領域内の合成班と機能班の研究者と連携することによって、実践的に超セラミックスの合成、機能の理解が順調に進んでいる。以上のことから、本研究計画全体としては、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
新規物質群の機能発現の起源を知るためには、直接的な物質理解の基盤となる結晶構造、組成、形態、化学状態等の巨視的・局所的構造と動的構造を正確に引き出すことが鍵である。本計画研究では、先端計測を駆使した様々な高度構造解析手法を適用することにより、従来のセラミックスでは予想だにしない超セラミックスの新しい化学状態・形態を解明するとともに、その場計測手法による動作機構を解明する役割を果たすことがミッションである。 2024年度には、領域内の共同研究を更に加速し、超セラミックスの合成および機能を知的に理解するためのノウハウを実践的に蓄積していく予定である。巨視的・局所的評価を主眼とした構造解析については、放射光及び中性子施設を相補的に活用した応用技術の開発を継続して行う。超高分解能共鳴非弾性X線散乱による化学状態解析については、ナノテラスに最適化された光学素子を含む装置の開発を継続するだけでなく、超セラミックスの新しい化学状態の解明にも着手する。反応・機能その場観察による超セラミックスの可視化については、公募班を巻き込んだ形で、分子ユニットの配位環境、原子配列秩序、化学結合状態の解析、組成状態解析、微細構造解析を連携させることにより巨視的・局所的な構造評価との複合解析の構築を継続して行う。また、理論班および公募班との連携により、合成可能性の予測や動的な物性の発現予測を視野に入れたマテリアルズ・インフォマティクスについても引き続き検討を行い、その手法の構築を目指す。
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