研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
23113008
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
高橋 文 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90370121)
|
研究分担者 |
長田 直樹 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 助教 (70416270)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 体色変異 / ドーパミン / 性行動 / RNAseq / 生殖的隔離 / 次世代シークエンサー / ebony / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
本研究では、ショウジョウバエの体色と行動の両方に関与するドーパミン生合成系の遺伝子群をモデルケースとして、環境適応の副次的な影響として起こる性行動の不適合性により新規生殖隔離が生じる分子機構を解明することを目的とする。また、より広範な視点からゲノムワイドなトランスクリプトームの遺伝子ネットワークにおける「ゲノム・遺伝子相関」の全体像を把握し、その重要性について定量的な議論を展開することを目標としている。 H24年度は、12月に雇用した博士研究員と協力性して、ドーパミン生合成系の遺伝子について定量PCR及びFluidigmと454 GS Junior による種内発現変異を行うための実験を進め、プライマーや実験条件の検討が済んでデータが出てきたところである。次年度から本格的な解析を進める計画である。今後は、多面発現遺伝子のゲノム進化過程を解明するため、上記の遺伝子について、発現制御領域の解析を進めていく計画である。また、性行動の微細要素と遺伝子発現変異との関係を見るため、高速ビデオカメラによる動画撮影を進めた。 次世代シークエンサーを用いたシス制御領域の転写制御の「ゲノム・遺伝子相関」解析については、対立遺伝子を区別したトランスクリプトーム定量データを得るために、18系統の雌雄から頭部と体のRNAを抽出し、Illumina HiSeq2000によるRNAseqデータを取得した。H24年度はこのデータの解析とメスに関する反復データの取得を行った。今後は、これらのデータについてシス制御領域による組織間発現制御の相関解析を行い、「ゲノム・遺伝子相関」が、遺伝子発現ネットワークを介してどのように集団内ゲノムの不適合性を引き起こしているかについて明らかにしていく計画である。この解析については論文として発表する準備も進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8月から、所属機関の別棟にプロジェクト研究室として一室本研究のためのスペースを借りることができ、分子実験、行動実験のための設備のセットアップを終えることができた。12月からは、博士研究員を雇用することができ、大幅に種内発現変異を定量するための分子実験が進展した。また、ゲノムワイドな発現解析のためのデータ取得が完了し、研究分担者とも頻繁に議論を重ねながら解析を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、雇用した博士研究員とともにドーパミン生合成系の遺伝子についての種内発現変異に関する分子実験をすすめていく。また、学部生が一人、体色の適応的側面を明らかにするための実験を進めてくれる予定である。 領域内北野班とFluidigmを利用したアレル特異的発現解析についての共同研究を開始したところであるので、今後情報交換を進めながら、研究材料の違いを超えた共同研究を展開していきたい。 次世代シークエンサーを用いたシス制御領域の転写制御の「ゲノム・遺伝子相関」解析については、これまで同様研究分担者と密な連絡を取るとともに、打ち合わせのための会議も定期的に行う計画である。解析方法の概要はまとまっているので、解析に目処がたち次第、投稿論文としてまとめる方向で進める。
|