計画研究
本研究では、ショウジョウバエの体色と行動の両方に関与するドーパミン生合成系の遺伝子群をモデルケースとして、環境適応の副次的な影響として起こる性行動の不適合性により新規生殖隔離が生じる分子機構を解明することを目的とする。また、より広範な視点からゲノムワイドなトランスクリプトームの遺伝子ネットワークにおける「ゲノム・遺伝子相関」の全体像を把握し、その重要性について定量的な議論を展開することを目標としている。H25年度は、前年度12月に雇用した博士研究員が中心となって進めた、ドーパミン生合成系の遺伝子について定量PCR及びFluidigmと454 GS Juniorによる種内発現変異の定量を行うための実験についてデータを出し、解析を一先ず終えることができた。また、多面発現遺伝子のゲノム進化過程を解明するため、上記の遺伝子について、転写因子の結合サイトの予測など、バイオインフォマティックスによる発現制御領域の解析も進めることができ、論文執筆の準備を進めている。また、性行動の微細要素と遺伝子発現変異との関係を調べるため、高速ビデオカメラによる動画撮影を行い、交尾直前の画像の解析を行った。次世代シークエンサーを用いたシス制御領域の転写制御の「ゲノム・遺伝子相関」解析については、対立遺伝子を区別したトランスクリプトーム定量データを自然集団由来の18系統の成虫雌雄について、頭部と体のRNAseqデータを取得してきた。H25年度は、このデータについてシス制御領域による組織間発現制御の相関解析を行い、「ゲノム・遺伝子相関」が、遺伝子発現ネットワークを介してどのように集団内ゲノムの不適合性を引き起こしているかについて、雌雄に偏った発現をしている遺伝子に着目して解析した。この解析結果については現在論文投稿準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
所属機関の別棟にプロジェクト研究室として一室本研究のためのスペースを借りており、本研究費により雇用した博士研究員が主に分子実験、行動実験を行うための設備を充実させることができた。博士研究員が中心となって取り組んだFluidigmと小型次世代シークエンサーを用いた新たな方法による種内発現変異を定量するための分子実験はうまくいき、精度の高いデータを得ることができた。ゲノムワイドな発現解析のためのデータ取得が完了し、研究分担者とも頻繁に議論を重ねながら解析を進めた結果、シス発現制御領域の進化に関するゲノムワイドな知見を複数得ることができ、論文執筆のための解析結果をほぼ全て準備することできた。
今後は、雇用した博士研究員が所得したドーパミン生合成系の遺伝子についての種内発現変異に関するデータをまとめ、遺伝子発現領域のドライな解析結果と合わせて、多面発現遺伝子の進化に関する議論を展開していく。また、H25年度に加わった学生とともに、体色の適応的側面を明らかにするために、体色とストレス耐性に関する実験を進めていく。また体色と温度変化の関係とその背景にある分子機構について実験を進めるために、学部生がもう一人加わる予定である。領域内北野班とFluidigmを利用したアレル特異的発現解析についての共同研究を行っており具体的な計画を詰めることができているので、今後情報交換を進めながら、研究材料の違いを超えた共同研究を展開していく。次世代シークエンサーを用いたシス制御領域の転写制御の「ゲノム・遺伝子相関」解析については、これまで同様研究分担者と密な連絡を取るとともに、論文を投稿する。また、Chip-seqなど新たな方向からのゲノムワイドなシス制御領域の解析について方法を模索していく。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 8件) 図書 (3件) 備考 (2件)
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