研究領域 | 植物気候フィードバック |
研究課題/領域番号 |
23H04971
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
須藤 健悟 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40371744)
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研究分担者 |
竹村 俊彦 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (90343326)
入江 仁士 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (40392956)
関谷 高志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 研究員 (00781460)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | BVOC / 化学気候モデル / 陸域生態系モデル / イソプレン / BSOA |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らが独自に開発している大気化学・気候モデルCHASER(MIROC-ESM)、エアロゾル・気候モデルSPRINTARS、および陸域生態系モデルVISITを組み合わせて植物起源有機化合物(BVOCs)発生量の高精度推定や気候影響評価を行う。今年度は、BVOCsおよび関連物質について、地上・衛星観測データを用いた検証を実施し、BVOCs放出量推定モデルの精緻化・改良を行った。また、BVOCsの大気中での酸化過程などを支配する対流圏化学過程やエアロゾル過程の改良も実施した。具体的には以下の通りである。
①BVOCs推定モデルである、MEGAN(Guenther et al., 2012)およびVISIT(Ito and Inatomi, 2012)に着目して、IPCC/CMIP6の実験データに関するモデル間相互比較を行った。この結果、現状の地球システムモデルで採用されているBVOCs推定スキームには、特にCO2増加による施肥効果および疎外効果について大きな不確定性が存在していることを見出し、各種モデルの特徴を網羅的に整理した。 ②BVOCs酸化の中間生成物であるホルムアルデヒド(HCHO)について、最新の衛星観測(TROPOMI)や地上リモートセンシング観測(MAX-DOAS)を利用したモデル検証を実施した。この結果、現状のCHASER(MIROC-ESM)で計算されるHCHOは各領域の観測と概ね整合的であり、モデル中で考慮されているメタンやBVOCsの酸化過程の妥当性が確認された。 ③CHASERのデータ同化システム(CHASER-DAS)によるBVOCs放出量推定についても、初期解析を行い、逆解析に向けた準備を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度の当初目標としては、化学気候モデル中のBVOC表現の妥当性検証と、BVOC放出量推定モデル計算の現状の把握、および精緻化に向けた方針の検討であったが、これらは上記のホルムアルデヒドに着目したイソプレン放出量および大気化学過程の検証や、CMIP6実験データを用いた解析作業により概ね達成されたと判断できる。今後は、検証結果を反映したBVOC放出量推定モデルの調整・最適化やBVOCからのホルムアルデヒドの収率調整などを実施し、確度の高いモデルフレームワークとして完成させる。
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今後の研究の推進方策 |
①VISITモデルで複数のエミッション設定や、新規スキームの導入を行い、計算されるBVOCs放出量、およびこの放出量を入力してCHASERで計算されるBVOCs濃度を検証し、領域ごとに傾向を整理する。また、関本班(B01)で展開されるBVOC濃度・フラックス観測の知見からも、VISITや親モデルであるMEGAN(Guenther et al., 2012)の計算の検証・改良を試みる。 ②次に、VISITのBVOCs放出量を入力しながらCHASERでBVOCsの酸化計算を行い、中間生成物であるホルムアルデヒド(HCHO)の全球分布を衛星観測(OMI、TROPOMI)データと比較することで、BVOCsの放出量分布や大気酸化能力OHの経年変動の推定を試みる。CHASERについては、大気化学場やBVOCs酸化計算におけるバイアス・不確定性の低減のため、協力者(宮崎) ・分担者(関谷)らが開発した大気化学データ同化システム(CHASERDAS/TCR)の改良・拡張を本格的に開始する、また、HCHO衛星観測については、分担者(入江)が展開する地上MAX-DOASによる高精度・通年連続観測も併せ、多重的にモデル検証に着手する。
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