研究領域 | 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究 |
研究課題/領域番号 |
24110008
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山本 政儀 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (10121295)
|
研究分担者 |
坂口 綾 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00526254)
海老原 充 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (10152000)
長尾 誠也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (20343014)
田中 万也 広島大学, サステナブルディベロップメント実践研究センター, 特任講師 (60377992)
高橋 嘉夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10304396)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 福島第一原子力発電所 / 存在状態 / 放射性核種の移行挙動 / 放射性セシウム / 超ウラン元素諸核種 / 河川懸濁粒子 / EXAFS法 / ヨウ素-129 |
研究概要 |
福島第一原発事故で[1]水圏・土壌圏に多量放出された放射性セシウムの化学(存在)状態を解明し、陸域から海洋に至る一連の系での放射性セシウムの挙動に影響を与える因子を明らかにすることと[2]微量放射能の分析・測定法の開発と応用を目指して以下のことを実施した。 [1]土壌-河川-河口-海洋系での放射性Csの化学状態と挙動については、フィールドと室内実験を行い、①樹葉へのセシウムの移行に関しての分布状態の時間変化、沈着と転流、②河川中の放射性Cs濃度・存在状態変化、③海水への溶出性について河川懸濁粒子、河床堆積物を対象とした溶出実験、④水質、粒度組成、鉱物組成、有機物濃度との関係、⑤福島とチェルノブイリの比較、⑥EXAFS法、粘土-有機物複合体のX線顕微鏡による観察、⑦平衡を仮定した場合の懸濁粒子と溶存態(分配計数Kd)のモデル化(Generalized adsorption model )を行い有用なデータを得た。 [2]微量分析・測定法の開発と応用に関しては、①環境に放出された超ウラン元素を中心に同位体比の知見を得るために放射能レベルの高い道路脇のダスト(100試料以上)を用いて,昨年度に引き続きU-236, Pu-238,239,240, Am-241,Cm-242,243,244の測定を行い、原子炉コアー中のこれら元素間の比との比較を行い,微粒子としてこれの元素が放出されたことの証拠を得た。エアロゾル中のI-129については、測定のための基礎検討を終了し、事故直後に採取された大気浮遊塵中に現在でも129Iが存在するすることを実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子炉から放出された放射性Csの動態に関して、陸域-河川-河口-海洋系でのそれぞれの系内の存在状態をフィイールドと室内トレーサ実験の両面から研究し、系全体を総合的にとらえることが出来るようになった。また環境中の微量放射能測定、特に超ウラン元素諸核種に関しては、世界トップレベルの数多くのデータを初めて取得し、放出に絡む原子炉コアー内の同位体比などとの比較を可能にした。事故初期の大気中放射性ヨウ素濃度を把握するために、半減期の長いヨウ素-129の測定法を検討し、今後につなげるデータを取得した
|
今後の研究の推進方策 |
福島第一原発事故で大量の放射性核種が環境に放出されて,3年が経過した。海域や陸域への放出状況や沈着状況が把握され,帰還地域の除染対策、初期被曝の評価が進められている。今後の環境への影響を考えた場合,中・長期的な環境中での放射性物質の移行挙動,それに影響を及ぼす放射性核種の存在形態の解明,更にそれらの情報を得るための極微量放射能測定法の開発が強く求められている。これらのことを踏まえて,1)微量な放射性核種の定量を可能にする高感度測定法の開発と応用, 2)放出された放射性核種の存在状態解析を中心に環境中での移行挙動予測を行う。この目的のために,①アクチニド同位体の迅速精密測定法確立および加速器質量分析計による中半減期(数十万~一千万年)同位体測定法の開発,②陸域内で河川を経由して海洋へ移行している粒子態の放射性セシウムの存在形態を把握,③大気エアロゾル中のヨウ素同位体(ヨウ素-129)の濃度レベルの時系列把握,存在形態解明、④環境中でのセシウムの化学種(特に腐植物質との相互作用について、その基礎データとしての錯生成定数を決定)し天然水中での化学種解析の基礎データ取得、⑤環境を模擬した室内実験により天然中での超ウラン元素の挙動を明らかにするための基礎データ取得を追求する
|