計画研究
長寿命放射性核種測定に関して,真空度向上や脱溶媒化によりCP-QQQ-MSで20倍の高感度化が達成でき,過去に日本近海に導入されたアクチニドの変遷史を定量的に明らかにできた。I-131が定量されていたエアロゾル試料(自治体)のI-129を測定して、それを用いてSPM試料のI-131/I-129を復元した。さらに,原子炉近傍ではPu/Cs-137比のバラツキが大きいが,10-50 km圏内においては,Pu, Cs共に同じように拡散,降下したように考えられた.また原発由来のセシウム濃集粒子中のウラン同位体比から、このウランが福島第一原発の2・3号機の燃料由来であることを示した。福島県内の河川の31カ所で採取された浮遊砂に対するセシウムの放射性セシウム捕捉ポテンシャル(RIP)や固液分配係数(Kd)を求め、その粒径、鉱物組成、有機物濃度などに対する依存性を定量的に検討し,モデル化可能性が示唆された。放射性セシウムの初期吸収経路として落葉広葉樹では樹皮沈着が重要であることを示し,コナラ及びコシアブラの樹皮、辺材、心材に安定セシウムを吸着させEXAFS測定を行った。その結果、セシウムは水和イオンと同様のスペクトルを示し、外圏型錯体として静電的に吸着していることが判明した.
2: おおむね順調に進展している
環境中の放射能測定,特に超寿命核種に対してCP-QQQ-MSを用い真空度向上や脱溶媒化により従来の約20倍の高感度化測定が可能になり,今後多くのデータが取得できる.大気中に放出された放射性ヨウ素-131濃度復元を目指して,半減期の長い放射性ヨウ素-129を測定してきたが,一部試料で復元可能性が見出だされた.陸域―河川―海洋系での放射性Csの存在状態,流出経路などについて基礎的な数多くのデータを取得し,河川水系における放射性セシウムの放射能濃度と存在形態の変動を把握することが可能となり,概ねモデル化も前進した.さらに,樹皮に取り込まれたCsの存在形態をEXAFS測定により,解明できる手がかりを得た.
実験やデータの取得については,概ね順調に進んでいるが論文化が多少遅れているため最終年度に向けたまとめが早急に必要である.測定に関しては,引き続きAMSやICP-QQQ-MSによる長寿命放射性核種測定のための高感度測定法の確立を目指し,マトリクスの異なる様々な環境試料に実際適用し、環境影響評価のみならず地球化学的トレーサーとしての利用可能性についても併せて検証する。またそのための放射化学トレーサーNp-236の製造を試みる.SPM試料のI-129に関しては,得られたデータからのI-131濃度の復元を最優先に検討する.原発由来のセシウム濃集粒子中のウラン、鉄、亜鉛の同位体比を測定し、これらが溶融体からの気化の過程で発生することを検証する.河川懸濁粒子が海洋に移行した場合の脱離反応をGeneral Adsorption Modelから定量的に予測する。阿武隈川, 新田川, 夏井川での観測を継続するとともに, 連続遠心機で河川水から懸濁粒子を捕集し, 懸濁粒子の特性分析・選択的抽出法による放射性セシウムの存在形態と吸脱着反応を検討する.植物への放射性セシウム移行に関して,常緑種について樹皮だけでなく樹葉にセシウムを吸着させてEXAFS測定を行い,化学形態と移行過程を解明する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 14件、 査読あり 15件、 謝辞記載あり 15件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 2件、 招待講演 7件) 図書 (2件)
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