計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究は転写サイクルとしてのヒストン翻訳後修飾の相互クロストーク、転写調節因子および共役因子による遺伝子転写開始機構の解明、ネットワーク制御により引き起こされる生命現象の解明を目的としている。平成24年度はヒストンH2Aユビキチン化、ヒストンH2AのC末端リン酸化およびヒストンH3K4メチル化によるヒストン翻訳後修飾間のクロストークの機構解析を行った。試験管内クロマチン再構築と遺伝子転写を用いてヒストンH2Aユビキチン化はヒストンH3K4メチル化を抑制することを明らかにした。これは精製により得られた蛋白を用いた解析でありヒストンH2Aユビキチン化はH3K4メチル化酵素を直接的に阻害することが考えられる。ヒストンH2Aユビキチン化は細胞周期の間期に亢進し、ヒストンH2AのC末端リン酸化は細胞周期の分裂期に亢進することを明らかにした。さらに試験管内のアッセイを用いてヒストンH2AのC末端ユビキチン化とヒストンH2AのC末端リン酸化は相互に抑制し合うことを明らかにした。ヒストンH2AのC末端ユビキチン化は遺伝子転写抑制のマークであり我々が明らかにしたヒストンH2AのC末端リン酸化が遺伝子転写活性化の翻訳後修飾であることを考慮すると合理的な結果であり今後の研究の発展が期待される。これら試験管内クロマチン再構築と精製蛋白を用いて明らかにした現象は、ヒストンの翻訳後修飾がネットワークを作り生命現象を調節していることが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度当初研究目的をほぼ達成しており順調に進展していると考えられる。我々は試験管内クロマチン形成因子を精製同定し、クロマチン形成系を確立している。これはクロマチンレベルでの研究において強力な手段であり遺伝子転写の機構を明らかにできると考える。
試験管内クロマチン形成と精製蛋白による遺伝子転写は詳細なメカニズムを解明するのに必須の技術である。この系を用いて、アミノ酸残基の翻訳後修飾とクロストークに焦点を絞り、これらの生理的な意義を明らかにし、また遺伝子転写活性化の機構を解明していきたい。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
PLoS Genet
巻: 8 ページ: e1002774
10.1371/journal.pgen.1002774
J Biol Chem
巻: 287 ページ: 23718-23725
DOI; 10.1074/jbc.M112.361824