計画研究
ヒストンH2Aのリン酸化によりサイクリンD1の遺伝子発現が制御されることを明らかにしてきた。これらヒストンの翻訳後修飾とクロマチン構造の役割を解明することによって、生体内での転写サイクルと生命現象との接点を明らかにする。平成27年度はヒストンリン酸化酵素VRK1をノックダウンすることによりがん細胞のG1/S期が抑えられ細胞増殖抑制が起きることを明らかにした。さらにこの増殖抑制はノックダウンに抵抗性のVRK1の導入により回復することを明らかにした。ヒストンH2AT120のリン酸化模倣である変異T120DによりNIH3T3に導入すると癌化トランスフォームが起きるが、平成27年度はさらにリン酸化の責任酵素であるVRK1自体をNIH3T3に導入し過剰発現させることによっても癌化トランスフォームが起き、ヌードマウスに腫瘍を作ることを明らかにした。癌ゲノムのデータベースからVRK1自体の変異があることも見出し、代表的なVRK1変異を作成し細胞に導入したクローンを作成済みである。平成28年度はさらにこれらの細胞の解析を行う予定である。一方ヒストンH2Aリン酸化には細胞周期のM期と関連したリン酸化と遺伝子転写と関連したリン酸化があることが我々の研究と他の報告より明らかになっている。酵母に於いてはBub1がM期と関連したリン酸化を触媒することが報告されている。我々は人のBub1(hBub1)が同様にM期と関連したリン酸化を触媒することを明らかにした。これらの結果はヒストンH2Aリン酸化が複数の酵素により触媒され癌化に重要な役割を担っていることを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
ヒストンのリン酸化修飾とクロマチン構造の役割を解明する過程で、癌化と現象の原因を明らかにすることができた。詳細なメカニズムを明らかにすることにより抗がん剤の標的も明らかになる。さらにこれらの研究を推進することにより、詳細に生体内での転写サイクルと生命現象との関わりを明らかにしていけると考える。
今回申請者ら癌細胞、正常培養細胞を用いてヒストンのリン酸化修飾と癌化と関係を明らかにしてきた。さらに研究結果を動物実験と試験管内の実験により確認していく予定である。ヒストンH2Aリン酸化が複数の酵素、hVRK1およびhBub1により触媒されることを明らかにした。ヒストンH2Aリン酸化には少なくとも細胞周期のM期と関連したリン酸化と遺伝子転写と関連したリン酸化の2種類がある。hVRK1が遺伝子転写と関連したリン酸化、hBub1がM期と関連したリン酸化を触媒するかいなかを確認する。さらにhVRK1およびhBub1をノックダウンすることにより癌細胞増殖が抑えられることも明らかにする。平成28年度はこれらを確認して癌化のメカニズム解明と新規抗がん剤開発を目指す。メカニズムの解明と関連して我々は従来の試験管内での遺伝子転写実験手技を発展させ、全ゲノムを用いてクロマチンを再構築し転写サイクルによる遺伝子転写開始機構を明らかにしたいと考えている。新学術領域の残り1年間により新規の研究領域を展開していきたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件)
Scientific reports
巻: 6 ページ: 20179
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PLoS One
巻: 10 ページ: e0142305
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巻: 5 ページ: 16567
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