現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①情報のまとめあげ困難説の定式化と検証について、これまで精緻化してきた仮説を改めて整理した(熊谷, 発達心理学研究, 2016)。現在、情報のまとめあげ困難説」を外部観測的な側面を説明するA01 班・B02 班のモデルと統合し、新しいASD理論を提唱する論文を投稿中である。またA02 班との協力によって,予測符号化モデルによる情報のまとめあげ困難説の表現を試み、当事者研究と構成論との間で検証可能なモデルを共有し、実験を行った。
②聴覚過敏と慢性疼痛の機序解明と支援法開発については、聴覚過敏への支援法開発として、A01班との協働により、自閉スペクトラム症における聴覚過敏特性に基づいた個人適応型過敏性緩和システムを提案した(市川樹ほか, FIT2016第15回情報技術フォーラム)。慢性疼痛に関しては、A01班との共同で、仮想現実(VR)を用いた神経リハビリテーション治療を行い、その治療機序が身体性の再獲得であることを解明した(Osumi et al., 2017, European Journal of Pain)。
③当事者研究自体が持つ治療的意義の検証については、当事者研究ネットワークによる調査により、ASDにおいては反芻傾向が高く、把握可能感が低い傾向があるとともに、両者の間に強い負の相関関係(spearman ρ= -.712, p < .001)が認められた(熊谷, 2016, 日本整形外科学会誌)。また、5年間にわたる縦断調査の結果、当事者研究群の自己効力感の有意な上昇が認められた(石川, 2016, 認知療法学研究)。ASD者向けの当事者研究マニュアルと、これを用いた臨床介入研究のプロトコールを作成し、2016年9月に東京大学ライフサイエンス委員会臨床審査委員会の承認を得た(No. 16-100)。予備研究では、対処可能感の有意な上昇(p= .043)が認められた。
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