研究領域 | 動物における配偶子産生システムの制御 |
研究課題/領域番号 |
25114005
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70281003)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 精原細胞 / サケ科魚類 / ニジマス / ヒメマス / vasa / 生殖細胞移植 |
研究実績の概要 |
多回繁殖型種としてニジマスを、一回繁殖型種としてヒメマスをモデルに用い、これら両種の精巣内における未分化な精原細胞(A型精原細胞)の挙動を組織学的に解析した。ニジマスはA型精原細胞で特異的にGFPを強発現するvasa-GFPニジマスをもちい、GFP抗体によりA型精原細胞を検出した。一方、ヒメマスではvasa抗体を用いた検出を行った。その結果、繁殖期前の33ヶ月齢では、いずれの種においても精巣あたり600-800万のA型精原細胞が存在していた。ヒメマスではその後37ヶ月齢までにその数は激減し、38ヶ月齢では完全に消失した。一方、ニジマスでは、その後もA型精原細胞の数は有意に減少することなく、排精期を迎えても同様の数のA型精原細胞を保持しつづけていた。 これら両種の差異が、A型精原細胞自律的に制御されているのか、それとも細胞環境に支配されているのかを明らかにするため、ニジマスの生殖細胞を不妊の三倍体ヒメマスへと移植し、その挙動を解析した。作出したヒメマス宿主は、通常のヒメマスと同様に成熟し、排精に至った。そこで、これらの精子をDNA解析に供した結果、ニジマスと同様のフィンガープリントが得られた。さらにこれらの精子をニジマス卵と受精したところ、これらのの胚は正常に発生し、ニジマスと同様のタイミングで孵化に至った。これらの結果から、ヒメマス宿主にニジマスA型精原細胞が生着し、配偶子形成を司ったものと判断した。そこで、これらのロットのサンプリングを行い、A型精原細胞の挙動を解析した結果、これらニジマスのA型精原細胞は繁殖期後も減少することなく、ニジマスのそれと同様に精巣内に残存することが明らかとなった。以上の結果から、サケ科魚類のA型精原細胞の挙動は細胞自律的に制御されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニジマスとヒメマスのA型精原細胞の挙動を明らかにし、両種の生殖細胞移植も終了している。このうちヒメマス宿主の解析は一部終了している。また次年度以降に詳細な解析をおこなうべく、ニジマスのトランスクリプトームのリファレンス作成もほぼ完了している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒメマスの生殖細胞を移植したニジマス宿主精巣内におけるヒメマス生殖細胞の挙動解析と、同様の解析をヤマメを用いて進める予定である。また、生殖腺の体細胞と生殖細胞のトランスクリプトームを進めることで、これらA型精原細胞の挙動を司っている遺伝子群を明らかにする。また、サケ科魚類の寿命を決定している因子を探索するために作成した異種由来の生殖細胞を保持したヤマメ宿主も順調に生育しているため、これらの寿命解析とサンプリングを進める。
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